転じて福・4(※18禁)


 目に涙を溜めて荒い息をつきながら、自分の白濁で汚れた赤木の唇を、カイジはぼんやりと眺めていた。
 赤木は右手を受け皿にし、その上にカイジの放った精液をとろとろと吐き出す。
「ずいぶんたくさん出したな……きもち、よかったか?」
 唇をぺろりと舐め上げながら問われ、カイジは真っ赤になったが、素直にこくこくと頷いた。
 赤木はニッと笑う。
「そうか。そりゃよかった。……それじゃ今度は、俺の番だな」
「んっ……」
 後ろに回された左手で尻の割れ目をするりと撫で上げられ、カイジの体が緊張する。
 赤木が目で促すと、カイジはおどおどと瞳を揺らしながらも、体を返して壁に手をつき、赤木の方へ尻を突き出す。
「いやらしいな、お前は……」
 瞬きをなんども繰り返しながら自分を窺うカイジを褒めてやるように尻を撫でた後、赤木はカイジの精にまみれた右手の人さし指を、つぷりと挿入した。
「ぁ、あっ……はぁっ……!」
 異物が侵入してくる感覚に、カイジの腕が震え、鳥肌がたつ。
「久しぶりだからか、やたらキツいな……こりゃあ、挿れるのが楽しみだ……」
 笑いながら、にゅぷにゅぷと指を馴染ませるようになんどもなんども出し入れされ、カイジの目が蕩ける。
「ふぁ、あっ! そ、そこっ……!!」
 深くまで入ってきた長い指がいいところを掠めた瞬間、カイジはびくりと体を揺らして甘い声を上げた。
「ん……? ここが、いいのか……?」
「んぁ! あっ、は、はい……そこ、もっと……あうぅっ!」
 ねだられるままに、そこをやさしく刺激してやれば、カイジは壁に頬を押しつけて快感を享受する。
「あーっ! あっ、きもちぃ、ですっ……あかぎ、さ、もっと……!」
 声を抑えることもすっかり忘れ、よがりまくるカイジだったが、ちょうどその時、バタバタと駆け込んできた複数の足音にどきりとして、慌てて唇を噛んだ。
「おい、本当にこっちへ来たのかよ?」
 呆れたようなその声に、カイジの顔から血の気が引いた。
 間違いない。さっきの黒服たちだ。
「ああ、確かにこのトイレに入るのを見た気がしたんだが……」
「なんだよ、頼りねぇな」
 自信なさげにしている男を、他の男が罵っている。
 つい今し方まで淫行に耽っていたことも忘れ、カイジは冷や水を浴びせかけられたような気持ちになる。
 心臓をバクバクいわせながら息を殺しているカイジを、赤木はじっと眺めていたが、やがてニヤリと悪い笑みを浮かべた。
「っ!? んんっ……!!」
 突然、後孔に挿入された指が蠢き、カイジはぎょっとする。
 慌てて赤木を振り返ると、赤木は自分の唇の前に左手の人さし指を立て、目を細めて笑ってみせた。
 まさか、と目を見開いたカイジの悪い予感は的中し、赤木は先ほど探り当てたカイジの前立腺を、ふたたび責め始めた。
「ーーーーッ!!」
 カイジの背がきれいにしなり、全身が快感にびくびくと震える。
 声はなんとか耐えたが、さっきよりも強く、ぐりぐりと容赦なくそこを蹂躙され、カイジは両手で口を塞ぎ、立っているのがやっとの状態だった。
 非難する目で赤木を睨むも、愉しそうに受け流され、その上指を足し入れられてますます動きが大胆さを増すだけだった。
 カイジは思わず大きく身じろき、ガタリと大きめの音をたててしまう。
 その音は当然、扉の外にいる黒服たちの耳にも入った。
「ん? 誰か入ってるぞ」
 ひとりの足音が近づいてきて、カイジたちが入っている個室のドアの前でぴたりと止まる。
 そして、カイジがもたれかかるドアが、壊れそうなほど強く叩かれた。
「おい、誰かいるのか?」
 乱暴な声に青ざめ、カイジは身を縮こまらせて必死で気配を消そうとする。
 しかし、赤木の指に絶え間なく前立腺を弄くられ続け、体の震えを止めることができない。
 手のひらでせき止めた声の代わりに、涙がぼろぼろと溢れてはカイジの頬を伝い落ち、赤木はその様子を愉しそうに鑑賞したあと、するりとカイジの前に左手を伸ばした。
「っ! ……!!」
 ふたたび勃ち上がり、先端から滴る蜜に濡れたそれを扱き上げながら、赤木は口を開いた。
「あー……ちょっと、腹の具合が悪くってな。すまねえが、しばらく出られそうにねぇ。他の便所、探してくれや」
 とても具合が悪そうには聞こえない、間延びした声で扉の向こうにいる連中に呼びかけながら、赤木は激しくカイジの陰茎と前立腺を責めたてる。
「ーー!! ……ッ!!」
 今にも漏れ出しそうになる嬌声を、泣きながら堪え続けるカイジに、赤木はつい、喉を鳴らして笑いそうになる。
「ほらな、ジジイしかいねえじゃねえか」
 離れたところから、ため息混じりの声が聞こえた。
「でも、確かにこの目で……」
「わーったわーった。いいから、他当たろうぜ」
 軽くあしらわれ、ドアの前にいる男はだいぶ渋っている様子だったが、遠くにいた他のふたりの足音が遠のいてゆくと、舌打ちとともにドアの前から離れ、立ち去っていった。




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