guilty pleasure(※18禁)  短文 拘束、目隠し


 体によくないものを、やめられたためしがない。

 酒も煙草も、甘いものも。
 ギャンブルも、と続けると、

「男と寝ることも?」

 余計な茶々が入る。

「"お前と"寝ることも、だよ」
「あらら。ひどいな」

 ひどいな、と愉しそうに呟きながら、目の前の男は手にした縄で、するするとオレの体を縛り上げていく。
 ひどいことをするために。

「そんな風に言うけど、あんたさ。やめたいなんて、思ってないだろ」

 酷薄そうに持ち上がった薄い唇が、その言葉を紡いだのを最後に、視界が完全に奪われる。

 頭の後ろから、布を引き絞る音。
 乾いた布の感触が、決して弱くはない力で目を圧迫する。

 瞼の裏にのしかかる闇。
 光の残像が砂嵐のように舞い、やがて過敏になった聴覚が、静かな声を拾う。

「ほら。欲しいものはちゃんと、自分で探しなよ」

 ジッパーを下ろす音。
 鼻先を掠める饐えた臭い。

 舌をのばして、目的のものを探す。
 あさましく、獣のような呼吸を繰り返しながら。

 体によくないものを、やめられたためしがない。
 大体、そういうものは、得てして抗いがたく蠱惑的な味がするものだ。

 酒も煙草も、甘いものも。
 ギャンブルも、こいつにされるひどいことも。

 舌先が、弾力のある肉に触れる。

 ためらいなく唇を寄せ、あたためるように慈しむように粘膜で包みこむと、頭の上の方で男が笑う気配がした。






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