新調 短文 壮年同士


「カイジさん、久しぶり」
「お前……」
「どうかした? 目ん玉こぼれ落ちそうだけど」
「いや、その……」
「そういやこれ、新調したんだ。どう?」
「え……」
「つっても、この前代打ちしたとこのヤーさんが、勝手に仕立ててきたんだが……似合ってるかい?」
「まぁ、うん……、そういや若い頃から、ときどき奇天烈な柄のシャツとか着てたよな……久々に思い出した……」
「ん?」
「ほら、あれだ……、目に優しくていいんじゃねえか?」
「…………色が?」
「そう、緑だから」
「……」
「麻雀打ってたら、目ぇ疲れるしな。歳も歳だし、体には気ぃ違わねぇ……、と……ッ!?」
「……ま、関係ねぇな、あんたの感想なんざ。どうせ、すぐ脱ぐからな」
「おい待てっ、こんなとこでっ、んっ、んんーー!!」

 男の宣言どおり、おろしたてのグリーンのスーツはその場で乱雑に脱ぎ捨てられ、翌朝さっそく派手に皺が寄ってしまったのであった。





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