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シリアス



「人の幸せを踏みにじってまで手に入れる幸せ…って、何なんだろうな」

疑問に思う。
長年、心の奥底に潜ませておいた憤怒の感情の全てを。
これは一体何のために今を生きて、何のために幸せを築いていくのだろう。
この楔で閉まっておいた感情に意味は、あるのか。

「なぁ、どうしてだ。ヴァン」

無知な眼差しを、ベッドに腰かけている幼なじみに向けた。
先程の独り言に何らかの反応も示さなかったであろう同室の人物に。
幼い頃を共に過ごした同郷の親友へ。

「…人は絶望する。怒り、憎しみを抱いてこの世界を生きる」

静かに瞼を落としつつ淡々と、いつもの低く重みのある声だけが部屋に広がる。
その声を聞き落とさないように耳を傾けた。

「時には預言という呪縛に囚われ、我を失う。幸せというのは…表向きの言い方だ」

それは、醜いこの世界を生きる者に向けられた演説のようなもので、心が傷んだ。
では何故、人はそれを幸せと呼ぶのか。
偽りの幸せを手に入れてまで道理を成し遂げようとすることに疑問が増える。
そんな、いたちごっこのような遊びを続けることを、どうして。

「それじゃあ、まさしく俺達が今手に入れようとしている幸せって何だ」
「…これはまた、気難しい質問だな」

フ、と鼻で笑われたことに関しては目を瞑った。
どのような答えを口にしてくれるのか、期待を抱いたからだ。
ヴァンと同じ幸せを、手にしようとしている。
果たしてそれは、世間体で言えば幸せと言える代物だとは言い切れないかもしれない。
間違っているのか、俺達は。
人の幸せを踏みにじってまで得るは幸せは、幸せと呼べないのか。
ただ、幸せを求めた者の血路は何処にある。

「人は幸せを求めることにより、他人の幸せを奪う」
「…ご託はいい。さっさと話せ」
「それは憎しみの連鎖だ」

ドクン、と心臓が大きく脈を打つ。
ヴァンがあまりにも真剣な表情で、こちらを見据えてきたからだ。
何も存在することはないはずはないのに、背中から送られる空気は重い。
まるで生き物のように蠢くようで、ぞくりと粟立った。

「憎しみの、連鎖…」
「そうだ。幸せは、憎しみを呼ぶ。他人から得た幸せはそう長くは続かない」

鼓動が早鐘を打つ感覚が止まることを知らない。
どうして、こんなにも心臓は言うことを聞いてくれないのか。
身体は正直だ。
自分の意思では、極度の興奮状態を止めるには困難だった。

「憎しみの連鎖を断ち切り、私達は幸せを手に入れる」
「そのためだけに、今を生きてきた。その幸せを掴むことを糧に…」

幸せを、手に入れる。
絶対的な幸せを。
踏みにじられた幸せを、憎しみの連鎖を終わらせる。

「例えそれが、踏みにじった幸せであってもな」

幸せは、憎しみだ。
人の幸せを踏みにじった幸せなんて、汚れたものである。
だがそれを、今は求める。
皆幸せを求める。
間違った幸せを求め、そうして世界は崩落していく。




end.
2010/10/16

憎しみの連鎖とか…どこかで聞いたことがあるんですけどー^^;
ヴァンガイはいつも暗くなった挙げ句に、復讐復讐言ってます。
そしてよく分からないまま終わるという…。
皆さんにこの小説の意図は伝わってますかね、伝わらせる方に問題があるのは重々承知のつもり…で、す。←



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