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もしもこの声が届くなら



「なー、ガイー」

脱力した肢体でベッドに横たわったまま、いつも通り使用人の名を呼ぶ。
特に用がある訳ではないが、それとなく呼んでみる。
恋人が用も無いのにパートナーを呼ぶように意味も無く。
しかし返事はない。

(あー…アイツ、今日外に用があるって言ってたな…)

ふと、昨日聞いていたようで聞き流していた会話を思い出す。
ごろん、と寝返りを打ち、呼んでも来ない使用人の名を懲りなく呼んでみる。

『何だ、暇そうだなルーク。剣の稽古でもするか?』

返事をしてくれる者が今、いない。
呼んだだけ不愉快になると言うか、イライラするような、苛立ちが募る。
呼んでも来ない、それは変わらない。
ぽすっ、と両手を広げては倦怠感しか残らず目を瞑る。

「ったく…一人で何してんだよ、アイツ」





「よぉ。ルーク」
「……」

陽気に窓から顔を出し、帰ってきたガイをルークはベッドから皮肉な眼差しで横流しする。
時刻はすでに夕方を迎える頃、日は大分傾いていた。

「何だその顔、どうした」

原因はお前だよ、と突っ込んでやりたい想いをルークは心の内に仕舞い込む。
ほぼ一日中出掛けてるお前の精神は一体どうなっているのか、と。
ガイはいつものように窓から華麗に部屋に入ってきてた。

「別にどーもしねーけど、お前今日何処行ってたんだよ」
「昨日言ったの聞いてなかったのか。新しく出来た譜業専門店に足を運んできたんだ」

それはそれはいつにない笑顔を零しながら嬉しそうにガイは喋り始める。
最新の音機関がな、けど値段が馬鹿高くて、あのモデルの形が欲しくてたまらないんだよ、などのどうでもいいことを飽きることなくズラズラと。
ベッドの上に起き上がり最初は耳を傾けていたが、つまらなくなってしまった。

「んーあー、もう音機関の話はいいって」
「そうか?まだ半分も話てないけどな」
「俺は譜業なんて興味ねぇーんだよ」

むすっと、また不快な表情を作った。
ガイの音機関好きには毎回頭を悩まされる。
集中し出したら終わりというか、名前を呼んでいるというのにこれっぽっちも気付きもしない。
「わざとだろ!」と、問い詰めた時はぽかんとした顔でこちらを見つめてくるものだから事実だ、と信じてやるしかないではないか。

「…ガイ、」
「ん?」

いちいちちゃんと反応しろよ、俺の言葉には。
想い描いていることと頭で考えることがうまく言葉になってくれず、矛盾したものが出来上がる。
感情を表すことが苦手で、毎回空回り。
別に困らせたいとか思っている訳でもないのに、どうしてか、分からない。

「俺の声、ちゃんとお前に届いてんのか」

予想外なことを言った覚えはないが、ガイはこちらを見て疑問符を浮かべていた。
なんともバレバレな、ポーカーフェイスとも言えない表情にイライラが募る。

「〜〜あー、もういーから今度俺がガイを呼んだらすぐ来い、絶対にだ!」
「いきなり何だそれ…」
「つべこべ言うんじゃねぇーよっ」

無茶ぶりな命令を突発的にガイに押しつけた。
いいから、来いよ俺んとこ。
いつでもガイが俺の傍に居ろ。
この声がお前の耳に届く限り。





end.
2010/08/07

深い意味も無く、書き始めたらこんな結果になりました。
私の書くLGは少しLGの斜め上をいきます。
GLになりそうでなんだか危なっかしいです。
これでもLGです(苦笑
裏がないと見分け付かなくなるんですよねー…。←
うちのルクたんは何に関しても不器用です。



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あきゅろす。
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