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「さっむ…」

視界に広がるのはなんとも幻想的な冬景色。
白銀の世界、とはまさにこのことか。
防寒をしているとはいえ、この寒さは全身を刺されるようだ。
紙袋を抱えた指先の感覚なんて、とっくに忘れてしまった。

「はぁ…」

器用に両手近くで体内にある息を吐き、温める。
白く広がった息は瞬時に無くなってしまった。
雪は止んだが、目の前と同じく真っ白な空をぼんやりと歩きながら眺める。
ふと、手に持っていた紙袋の感覚が失われた。

「遅いですよ」
「…ジェイド、」

帰りが遅くて心配してくれたのだろうか、少々拗ねた顔をしているのが見て分かる。
紙袋はジェイドの手の中だ。

「帰りが遅いので心配して来ちゃいました」
「子供じゃないんだぜ?そんな心配することじゃないだろ」

ははっと思わず苦笑い。
2人して口から白い息が漏れた。

「やっぱり寒いな…」
「ええ、生憎この寒さに馴れてしまいましたよ」
「そりゃあ、な」

両手を擦り合わせながら手の感覚が戻るよう、温めた。
その行動を見て思い付いたのかジェイドは俺に手を差し伸べてきた。

「ガイ」

優しく名前を呼ばれた。
重ねた手はしっかりとジェイドの手と絡み合う。
俗に言う、恋人繋ぎ。
指の芯まで冷めきってしまった俺の手とは異なり、ほんのりと温かみを感じた。

「…あったかい」
「それは良かった」

重なった手はそのままジェイドのコートのポケットの中へ。
はたから見たら男2人がこんなことをしているだなんて恥ずかしかったが、周りには人っ子1人誰も居ない。
こんな2人だけの時間が、何だか心地好く感じられた。

「家に帰ったら嫌と言う程、暖めて差し上げますから」
「…、変態」
「おや。どういう意味で捉えました?私は暖炉で身体を暖めましょう、という意味で…」

ポケットの中でぎゅう、とジェイドの手を握り締めた。
ほんのりと、頬が赤く染まる。
それは甘えるように、ねだるように、求めているようで。

「…それとも、して欲しいのですか?」
「寒いの、苦手なんだよっ…」
「では、家に帰ったら思いっきり私に甘えて下さい」

2人の目的地であるジェイドの屋敷はすぐ、そこ。

「それが出来たらじっくり朝まで可愛がってあげましょう?」
「なんか趣向が変わってないか…?」
「どっちも同じようなもんですよ。ねぇ、ガイ」

ポケットに入っていた手は、すっかりジェイドの温もりで暖まっていた。





END.
09/12/08〜2010/01/17

◆あとがき◆
最初はジェイドのポケットに手を突っ込んでぬくぬくラブラブさせたかったのです…が^^;
どうにか終わらせようとしたらジェイドが変態で終わりました。
それでもガイ様をからかうジェイドを書けたので、満足です。
ガイ様は寒さに弱かったら可愛いと思います。
そしてジェイドに暖めて貰ってれば良い。
それを口実に流されてしまえば良い…^^←
最後まで読んで下さった方々いましたら、ありがとうございました!

村瀬りんく

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