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10'年越し



「短かったですねぇ…」

独り言だろうか、ジェイドにしては珍しい主語のない言葉だった。
その不自然な不思議さに質問をして欲しいのか、それに続く後の言葉は暫く無かった。

「短かったって、何が」

相手の思うままに質問をする。
するとジェイドはこちらを向き、目を細めた。
何を微笑む必要があったのか、そのままゆっくりと口を開いた。

「貴方と過ごした一年が、ですよ」

あまりにも女々しく、そしておかしい返答に対応が遅れてしまう。
同時に肩がずるり、と落ちてしまっていた。

「おや。何ですかそのリアクションは」
「え…あ、いやー。アンタにしては随分と風変わりな解答だったなと思ってさ…」

普段、冗談を言わないという訳ではないジェイドだが、時たまきつい一言が降りかかってくる。
今がその時なのか。
全くと言っていい程、どんなリアクションを展開していけばいいのやら。
驚いた様子では、もう通用しない。

「まさかガイ。私が今言ったこと、冗談だと思っていませんよね」

確信を突かれることを言われれば、更に気持ちが追い込まれる。
たらり、と暑くもなく寒くもない身体からは冷や汗が垂れるのを感じた。

「冗談じゃ、なかったのか…」
「当たり前です」

正直に本音を零すと、ジェイドの機嫌を損ねてしまったかのように思えた。

「バレンタインが過ぎ、貴方の誕生日が来て私も誕生日を迎え…クリスマスも終わり、もう少しで今年が終わろうとしています」
「…言われてみれば、あっという間だったな」
「ええ。短いものですね」

思い出してみれば、今年もこれと言って大きい出来事は無かった。
しかし、ジェイドとの記憶を振り返ってみると密度が高いものばかりだ。
時には共に笑い合い、時にはお互いに反発もし、そしてたくさん、愛し合った。

「来年もよろしくお願いしますよ。ガイ」
「…っと、何だよ。いきなり改まって」
「今年もそうでしたが、来年もたくさん愛して差し上げますから」

そ…っと、肩に触れられた。
肩同士を寄り添い合っているだけだと言うのに、妙に恥ずかしさを感じる。
ろくに顔を合わせることが出来なかった。

「あんまりこう…真面目に言われると、恥ずかしいだろ…っ」

今更になって、と自分でも思う。
ジェイドと付き合って何年も経つと言うのに、相変わらずこんな態度の恋人に愛想をつかしていないか心配になってしまう。
気にしすぎなのか。
ちら、と横目でジェイドの表情を伺った。

「そうですねぇ。それではこうやって面と向かって言うのではなく、行為の最中にでも告げた方が良かったですかね」
「やー…、それもっ…恥ずかしい、な…」

ぽりぽり、と頬をかく。
それは恥ずかしさの、象徴。

「まぁ、来年もこちらこそよろしく頼むよ。ジェイド」
「もちろんですよ。ガイ」





end.
2010/12/31



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