長編小説 F ユキ視点 起きたら朝の8時だった。 昨日泣きながら眠っていたんだ。 瞼が重い。 学校行けるほどにはなったけど、今日はハルが学校休んで家においでって誘ってくれたし、今日まで休もう。 渇いてかぴかぴになった涙の跡を消すように顔を洗って10時前までぼーとする。 時間が来てハルの家につくとすでに着替えていて驚いた。 「あれ、珍しいね、起きてるのももう着替えているのも(笑)」 「…嫌味かよ。俺だって約束した時間にはちゃんと準備できてるの」 ちょっと拗ねたような声でハルが答える。 「そんなこと言ってさ、俺、覚えてるんだからな。一緒に遊び行こうって言って、約束の時間にお前ん家着いたら、まだ寝てて2時間無駄にしたこと。」 「そんなん忘れろよ」 「いーや、それだけじゃない!学校行こうって誘いに来たら面倒臭いからスウェットで行くって言って聞かなくて俺も遅刻しそうになったんだ。それから俺はお前と一緒に学校行くのは諦めたんだ。」 「んー、そんなことあったかぁ…。」 うん、いつもと同じような会話。 ハルとはこういう雰囲気が好き。 「んなことより、お前かなり痩せてね?」 急にハルが俺にダイブするように抱きついてきた。 「ふぎゃーッ!!何すんだよ!」 「いや、まじで痩せたって。お前ちゃんと食ってた?」 すぐに離れて、テーブルの上に置いてあったコンビニ袋をあさる。 「んー、これとか食べろ。お前好きだろ?」 ハルが手にしたのは俺の好物のダブルサンド。 チョコクリームと、カスタードクリームがフランスパンに挟まっているやつ。 人気なのかその逆なのか、朝にしかないコンビニ限定の商品なのだ。 嬉しさに思わず笑顔になる俺。単純だな。 手に取り、思いっきりかぶりつく。 フランスパンの固さと戦いながらチョコとカスタードのハーモニーを味わう。 そこでハルがもう着替えている理由が分かった。 「…もしかしてわざわざコレ買いに行ってくれたの?」 「ん?まさか(笑)気付いたら飲み物なかったからさ、買いに行ったついで。」 そう言ってるけど、その袋の中、飲み物より俺の好物のほうが多いよ。 優しいな、ハル。 やべー、大好きだ。 パンを食べ終わったあとは、いつものようにグダグダと過ごす。 俺はマンガを読んでハルは携帯を弄ってる。 「そういえばさ、キヨが今度3人でご飯でも食べに行かないかって。」 「…ふぅーん。」 「なんだかんだあったけどさ、キヨのおかげでハルと仲直りってゆーのかな?、まぁ、元に戻れたし。」 提案した言葉にあまり乗り気でなさそうなハルに理由を話すがそれでも乗り気ではなさそうだ。 「…確かに島村のおかげでユキと連絡取れたけどさ、勘違いしてユキを泣かして…俺はあまりあいつ好きじゃない。てか、ユキのこと信じなかった奴だろ?お前まだ友達すんの?」 ハルの言葉が突き刺さる。 「で、でも勘違いなんて誰にもあるしさ、信じてないってゆうか、俺の言い方が悪かっただけかもしれないし…」 そうだよ。 裏切られたって思ったけどそれも俺の勘違いだったかも知れない。 「はぁ、…ユキ、優しすぎ。はっきり言うけど島村はユキを裏切ったの!もう友達やめろって。…また裏切られるユキ見たくない。」 最後の言葉がすごく優しい声で。 何故かハルの言うことは全て正しい気がして。 思わず頷いていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |