長編小説 C ユキ視点 起きるともう夕方だった。 確か日曜日から何も食べてないのか。 さすがにお腹がすいた。 ご飯作る気力ないなぁ。 携帯を見ると、ハルから何回か電話がかかってきていた。 いつもならすぐにかけなおすけど今日はハルの声聞いたら、また嫌な感情が溢れてきそうでかけなおすのをやめた。 あ、またキヨからメール来てる。 ------------------------ sub:無題 本文:元気かぁ?今日お前ん家行きたいんだけど大丈夫? ------------------------- 時間を確認すると昼過ぎに送られてきたものだ。 もう学校終わっている時間だけど帰ったかな? すぐに返信する。 ----------------------- sub:re:無題 本文:返信遅くなってごめん。もしかしてもう帰った?いつでも家に来て良いよ。 ----------------------- 携帯を閉じると、ハルのことを思い出してしまった。 ハルを責めるのは間違いって分かってる。 でもとても悔しかったんだ。 俺のこと好きって言ってくれた人がハルを好きになって、あっという間に俺は捨てられて…。 ハルがモテるのも知ってるし、俺が可愛くないことも理解している。でもさ…。 そうだよな。ハルは悪くない。 可愛くない俺が悪いんだ。 でも…もうあんな思いはしたくない。 …できるならハルとはもう…。 これ以上みじめな思いはしたくないんだ。 ハルとはしばらく距離を置こうと思った時携帯が震えた。 キヨからメールだ。 ---------------------- sub:re:re:無題 本文:じゃぁ、今から行くな(^□^) ---------------------- あ、まだ帰ってなかったんだ。 良かった。 今はハル以外の誰かと話したかった。 くだらない話でいい。 俺って自分で思っているより寂しがり屋なんだな。 しばらくすると玄関のインターホンがなった。 ドアを開けるとコンビニの袋を持ったキヨが立っていた。 「これお見舞いー」 袋の中には栄養ドリンクや、ウィ○―inゼリー、お菓子などが入っていた。 「うわッ!こんなに?ありがとう」 お礼を言った声が枯れていて自分で驚いた。 必要最低限の水分しか摂取してなかったからなぁ。 キヨを部屋に招き、買ってきてくれた栄養ドリンクを飲む。 独特の味が舌と喉に染みた。 「これ、昨日と今日の分のノートな、コピーしといたから。」 そう言い、鞄から何枚かのプリントを出し手渡すキヨ。 「まじ!?ありがとー。助かるぅ」 パラパラとプリントを見ながらお礼を言う。 「なぁ、ユキ…」 キヨがじっと俺の顔を見ながら話しかける。 「ん?」 その視線に気づき俺もキヨをみつめる。 「リョウさんと別れたってホント?」 キヨの言葉に喉がつまったような感覚に襲われる。 「なッんで、それ…」 「高城から聞いた。リョウさんが高城に惚れて別れたって。」 キヨは俺から目をそらさずに淡々と言葉を続ける。 「…信じたくないけど、ユキが高城にひどいこと言ったんだって?」 「あッ、それは……うん、言ったけど…」 確かにハルから誘ったとかひどいこと言ったと思う。 「…本当だったんだな。じゃぁ、いろいろ嫌がらせもしたってのも本当なんだな。」 「!?嫌がらせ!?…何それ」 「詳しくは言わなかったけど、高城、辛そうな顔してたぞ。謝りたいけど無視されてるみたいだって。」 無視って…。そりゃ、電話取れなかったけどあれは寝てたからだし。 何か言いたいけど何を言っていいのか分からなくて黙ってしまった。 「ユキさぁ、彼氏が高城のこと好きになったからって高城は何も悪くないだろ?変な八つあたりはやめろよ。な?」 …分かってるよ。 俺が悪いんだろ。 でも… 「俺、嫌がらせとかしてない…。」 それだけは言っておきたくて絞り出すように訴えた。 それに対しキヨが 「…ユキ、もういいから。悔しかったんだよな、気持ちわかるから。でもさ、していいこと悪いことがあるだろ。」 …それって、俺の言葉信じてないってこと? 「てか、高城ってやっぱカッコイイよな。いや、可愛いってゆーかさ、ユキなんでもっと早く紹介してくれなかったんだよ。」 キヨの中ではさっきの話はもう終わりのようだ。 明るい声でそんなこと言ってる。 「…前からいい奴だって言ってんじゃん。」 ぼそっと呟く俺にちょっと苦笑しているキヨ。 「でもさ、思ってたより雰囲気いい感じでさー。そーだ!今度さ、一緒に飯食いに行こうぜ!なッ?ユキも仲直りのきっかけ欲しいだろ?」 …俺とハルとの関係を取り持とうとしてくれてるだけだよな。 「うん。今度いこ。」 無理に笑顔を作って答える。 笑えているだろうか。 その後すぐにキヨは帰った。 …なんか疲れた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |