妄想圏外区域 A 源田君が痛みに呻いているのをスルーして、佐久間君は隣にいる僕をじとりと見つめてくる。 「…それで、お前本当にプロミネンス知らねぇのかよ」 「う、うん」 こくりと頷くと信じられないって顔をされた。そんなに有名なのかな…プロミネンスって。 「まあ吹雪は疎いところがあるしな。…プロミネンスってのはこの町一帯に名前を轟かせている不良グループのことだよ」 「不良…」 そう言われても中々ピンとこない。頭に浮かぶのはモヒカンやリーゼント、長ランといった時代錯誤な不良の姿。そもそも不良なんて滅多に見ないから、僕の乏しい想像力じゃこれが限界だ。 「そのリーダーがこの学校にいるって専らの噂なんだよ」 「ふーん。どんな奴か分かるのか?」 「いや、それがちっとも。ただ、喧嘩が物凄く強いってのは確かだな」 「喧嘩かぁ…」 「ま、俺達には無縁の存在だな」 佐久間君の言葉で不良云々の話は終わりになった。それからはサッカーの話が主だったけど、やっぱりこういう話の方が楽しいな。 . [*前へ][次へ#] |