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妄想圏外区域
C


「手…?」


思い出すのはじんわりと感じた温かさ。


「俺と佐久間が来てすぐ離したみてぇだったけどな」

「………」


一気に色んなことを知らされて、頭がパンクしそう。頭の痛みは和らいできたけど、別の意味でズキズキしてきた。

そうして、思い出したことが一つ。


「ねぇ、不動君。エンペラーズって?」


ぐるぐる回る思考の中でぽこんと浮かんだ単語を口にすると、不動君は途端渋面になった。


「さっき口止めされたばっかだから、俺からは言えねぇ。そのうち、あいつ自身が話すさ」

「…うん」


『あいつ』が誰だかなんとなく分かった気がしたけれど、あくまでこれは僕の予想。予想は予想でしかないから、言葉にすることは憚られた。
だから軽く頷いて、それ以上のことは追求しなかった。


「…っと、もうこんな時間かよ。俺は帰るぜ。お前はどーすんだ?」

「僕は部活に……。…あ、不動君。もう一つだけ聞いていい?」


扉に手をかけながら顔だけ此方に向けた不動君に、ずっと気になっていたことを聞いてみる。


「プロミネンスの名に縛られてる、ってどういう意味?」

「…言葉通りの意味さ」


からから、ぱたん


閉められた扉を見つめながら、僕は一つだけ理解した。
彼はやっぱりサッカーが嫌いなわけじゃないんだって。

分からないことはまだあるけれど、今はこれだけ分かれば充分。

キャプテンや皆にも伝えておこうと思案しながら、僕は保健室を後にした。


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あきゅろす。
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