妄想圏外区域
C
行列を総無視して案内されたのは、他のテーブルから意図的に離されている0番テーブル。
テーブルを挟んで俺の前に座ったイエローからは疲労の色が見えた。
「お久しぶりです、シルバーさん」
なのに無理して笑顔を浮かべるイエローにどうしようもない思いが込み上がる。
「…ああ、久しぶり」
「ゴールドさんと一緒じゃなかったんですか?」
「あいつはミスコンを見に行った」
「ミスコン…あ、ブルーさん目当てですか?でも確かブルーさんは大食い大会の方に出場するって言ってましたけど…」
「………」
…確かに姉さんは見た目に反して大食いだったな。取り敢えずゴールドに対しては御愁傷様とだけ言っておこう。
「お待たせ致しました、セットメニューです」
「有難う、僕が並べますよ」
運ばれてきた軽食を手際よく俺の前に並べるイエロー。この食事も券のサービスらしい。
「イエロー」
「はい?」
男の格好をしていても分かる女性らしい雰囲気。イエローのそれはどこかふわりとしていて、心が和むのを感じる。
あの時どうして分からなかったのだろうと不思議に思う。
…昔の自分を恥じたところでどうにもならないが。
「……この前は、すまなかった」
「え?」
きょとんと此方を見てきたイエローは謝罪の内容に気付いたのだろう、慌てた様子で首を横に振った。
「そんな、シルバーさんが謝ることなんてないですよ!悪いのは騙した僕ですし…」
「お前がそう思っていても、俺の気が済まないんだ」
イエローの言葉に被せるようにしてきっぱりと言い放つ。
彼女は暫くしぶっていたが、やがて不承不承、といったように頷いた。
それに満足して、ふと時計を見るともう5分も過ぎていた。
残り10分。彼女と話していたい気持ちが膨れ上がる。そんな自分の思いに若干の動揺を覚えながらも、俺はサンドイッチに手を伸ばしながら口を開いた。
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