妄想圏外区域
A
のろのろと重い瞼を開くと、視界いっぱいに白い天井が飛び込んできた。つん、と鼻につく薬品の匂い。ああ、保健室だと認識した瞬間、綺麗な銀色が視界いっぱいに広がった。
「吹雪、大丈夫か!?」
「さ…くま、君…。うん、大丈……」
ぶ、と言おうとしたところで頭がずきりと痛んだ。思わず痛い所を押さえると、佐久間君の顔がみるみる朱に染まっていった。怒っているのが一目で分かる、けど。
「佐久間君が怒る必要なんてないよ。僕が勝手に間に入り込んだんだから」
「そうだとしても、俺が許せないんだ」
「……有難う。でも、もう大丈夫だから。そんなに痛まないし」
にこりと微笑んでみせると、佐久間君はしぶしぶといったように引き下がってくれた。
「それより、もう部活の時間でしょ?僕も後で行くから先に行ってて」
「………分かった」
でも無理はするなよ、と釘を刺してから佐久間君は保健室を後にした。
…まだ少し頭は痛むけど、動けない程痛いわけじゃない。
ゆっくりと身を起こしてベッドから下りようとした時、ベッドとベッドを仕切っていたカーテンがシャッと音をたてて開かれた。
まさか誰かいるとは思わなかったから、びっくりしてそっちを見ると。
「…あ?佐久間の奴、もう行きやがったのか?」
「不動君…」
そういえば彼も殴られていたということを思い出す。
「大丈夫?凄く大きな音がしたから…僕なんかより相当痛かったんじゃ」
「んなヤワな身体はしてねぇよ。……それより、お前何をしたんだ?」
「へ?何を…って何を?」
「分かんねぇから聞いてるんだっつの。あいつを…プロミネンスのリーダー、南雲晴矢を虜にした理由を聞いてんだ」
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