妄想圏外区域
B
向けて、怒りよりも先に戸惑いが浮かんだ。
彼は、凄く哀しそうな顔をしていた。僕の見間違いかもしれないけど、何故だかそう見えた。
「………また、お前かよ」
吐き捨てるように言われた言葉にもどことなく覇気がない。
「う…ぐっ」
ふと漏れた呻き声にはっとする。
見れば殴られて倒れていたクラスメート…不動君が憎々しげに男の子を睨みつけていた。
「はっ、本当のこと言われたからってキレてんじゃねーよ…!」
げほっと咳込みながら緩慢な動きで立ち上がる不動君。
それを支えようと佐久間君が近寄っていく。…そういえば佐久間君と不動君、それと源田君は幼馴染みだって聞いたことがある。佐久間君があんなに怒りをあらわにした理由が分かった気がした。
「大丈夫か、不動」
「ったりめーだ。俺がこんな奴に負けるかよ」
「ああ…、そうだったな」
その会話で何かを察したのか、不意に口元を歪める赤髪の彼。
「…てめぇ、見たことがある顔だと思ったらエンペラーズの奴か」
「間違えんな、元エンペラーズだ」
「……エンペラーズ?」
聞き慣れない単語に首を傾げると、複雑そうな顔をした佐久間君と目が合った。
…?
理由が分からずますます首を傾げてしまう。
そんな僕の思考を遮るかのように不動君の声が響いた。
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