妄想圏外区域
A
ドカッ
耳を塞ぎたくなるような打撃音が僕達を襲った。人を殴ったような、鈍い音。
痛くはない。僕達が殴られた訳じゃないから。…だけど。
「…え……?」
「っ、あいつは昨日の…」
地面にぐったりと倒れているのは、同じ外掃担当のクラスメート。彼の後方では残りの2人がガタガタと震えていて。地に伏している彼の前にはあの、赤い髪の男の子が。
「てめぇっ!何してやがる!!」
「佐久間君っ!」
今にも飛び掛かりそうな佐久間君を必死に押さえる。
「落ち着いてっ、佐久間君。暴力じゃ何も解決しないよっ」
「……っ、………」
掴んでいた腕から力が抜けるのを感じて、僕はそろそろと手を離した。
そして、改めて彼の方へと目を向けた。
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