妄想圏外区域
A
「おま、昨日の奴と話したのか!?」
報告会みたいになっている昼休み。ペンギンティー(原材料はやっぱり不明)の紙パックを握り潰しそうな勢いで身を乗り出してきたのは佐久間君。昨日みたいに吹き出さなかったからか、ほっとしている源田君には目もくれず般若の形相で詰め寄ってくる。…ちょっと、怖い。
「落ち着けって佐久間。…別に何もされなかったんだろ?吹雪」
「う、うん。二度と話し掛けるなとは言われちゃったけど」
それだけだから、と佐久間君を落ち着かせるように言うと、なんとか身を引いてくれた。…納得はしていないみたいだけれど。
「でも、これではっきりしたな」
「え?」
「あの赤髪がサッカー好きだってことがだよ」
自信満々なの声音のまま、風丸君は続きを口にした。
「そいつ、サッカーをしたくないって言ったんだろ?」
「うん」
「したくない、イコール好きじゃないってことにはならないと思うんだ」
「ああ、確かに」
納得したように頷く源田君。嫌いなのにあんなに上手いはずないしな、と呟かれた言葉にその場の全員が首肯する。
好きなのに、サッカーをしたくない。
天邪鬼という一言で片付けることはどうしても出来なかった。
したくない、じゃなくて。
することが出来ない、そんな理由がありそうな漠然とした予感。
その予感が当たっていることを知ったのは、その日の掃除時間だった。
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