妄想圏外区域
E
「…木暮、一体何があったんだ?」
音無さんに傷の手当てをしてもらった木暮君に問い掛けるキャプテン。
「あいつはいきなり噛み付いてきた…と言っていたがそうではないだろう?」
鬼道君のどこか確信めいた言葉に頷きながら、木暮君はとつとつと話し始めた。
「…部室に向かっている途中であいつに遭ったんだ。遭った、というかいきなり道を塞いできやがって。こっちは急いでるんだって言っても聞く耳持たないし。だから無理矢理通ろうとしてやったら、あいつ嫌な笑み浮かべて……てめぇらのサッカー部を潰してやるなんて言いやがったんだ。それでつい頭に血が上って…」
「噛み付いた、ってわけか」
「…いや、それだと少しおかしい所がある」
「おかしい?」
鬼道君の言葉に首を傾げるキャプテン。
「あいつがサッカー部を潰したとして、何の得になる?それに潰したいのならさっきのボールの取り合いに条件を付けてくるはずだ」
「あ…」
ふと気になることがあって声をあげてしまった。
「どうした、吹雪」
「えと。大したことじゃないかもしれないけど…。あの男の子、木暮君がサッカー部に入ってるってよく分かったよね。ユニフォーム着てないし、それに木暮君はついこの間転校してきたばかりなのに」
「…!成程、それはつまり……」
こういうことだろうな、と前置きして鬼道君が話してくれた内容は。
僕が朧げながらに感じていたものと同じものだった。
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