妄想圏外区域
B
校舎の中に入ると、お化け屋敷や展示コーナー、宝探しなど多種多様なものが勢揃いしていた。
人の波をかきわけながら進んでいくと、とある教室の前に行列が出来ていた。そろそろお昼時。きっと飲食店の類だろうと見当をつけて通り過ぎようとした。
だが、視界にいつの日かの金髪が飛び込んできた瞬間、俺の足はぴたりと止まった。
開け放たれた扉の向こう。そいつはトレイを抱えて危なっかしい足取りでせわしなく働いていた。
ふらり、と吸い寄せられるように足が動いた。
ああでも中には入れない。入るなら並ばなくては、と定まらない思考がぐるぐると渦巻く。
そんな俺を不思議に思ったのか、入口で売り子をしていた男…装をしている女子が声をかけてきた。
「どうかなさいましたか?」
「あ……」
その時ふと、姉さんから渡された券の存在を思い出した。もしかしたら違うかもしれないと思いつつ、鞄の中からそれを取り出すと、男装女子は納得したように頷いた。
「優遇招待券ですね。えぇと…指名はイエローとなっていますが宜しいでしょうか?」
「指名?」
イエローの名が出たことに驚きながらそう尋ねると、優遇券に印されている丸の色で指名出来る店員が決まっているという答えが返ってきた。
そして、最大15分間はその店員と二人で話が出来るというサービスらしい。
変わったサービスだなと思いながら首肯した矢先、男装女子は教室の中に向かって声を張り上げた。
「招待者様一名ご案内!イエロー、0番テーブルに案内よろしくっ」
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