妄想圏外区域 俺と彼女の初恋唄 「はい、シルバー」 土曜日の朝、眠い目をこすりながら階下に降りると、やけにテンションの高い姉さんから二枚の紙を渡された。 「これは…」 「文化祭で催されるある喫茶の優遇招待券よ」 ある喫茶。 無駄に強調されたその言葉に、ふとイエローの顔が浮かぶ。 「なぁ、姉さん。その喫茶というのは…」 「もう一枚はゴールドにあげてね。それじゃアタシは準備があるから先に行くけど、ちゃーんと文化祭に来るのよ?」 何度も俺に念を押して、姉さんは意気揚々と出掛けていった。 元々行くつもりだったから行かないなんてことは有り得ない。 それに。 『遊びに来て下さいね』 あいつに言われた言葉が、あの日からずっとリフレインしている。 何故だかは分からない、けれど。 文化祭に行くのが少しだけ楽しみになったことは確かだ。 そんな不可思議な自分の思考に首を傾げつつ、俺は未だ眠りについてあるだろうゴールドを起こす為、携帯に手を伸ばした。 . [*前へ][次へ#] |