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妄想圏外区域
B


「私は、お前が喜ぶと思って作ったのに。…迷惑だったみたいだな」


無表情が少し哀しげな表情に…ってうああ何これっ、何この罪悪感!


「ち、違うよガゼル君!作ってくれたのは嬉しいけど、そのケーキの用途が嫌なだけであって…」

「結局嫌なんだろう?」

「う……」


唯一の癒しであるガゼル君からのひやりとした視線がとても痛い。

多分あの頭が沸いてる吸血鬼に言われて作ってくれたんだろうけど、悪気はないんだろうけど。

っ…、ああもうっ。


「…分かったよ。食べるからそんな顔しないで、ガゼル君。僕のためにわざわざ有難う、凄く嬉しい」


最後らへんが棒読みになってしまったのは仕方がない話。


「それじゃあフブキ君っ、一緒に初の共同作業を…ってぬょふっ!?フォークは投げる物じゃないよフブキ君!」


黙ることを知らない吸血鬼はこの際もうほうっておこう。

適当に切り分けたケーキをぱくりと咀嚼。
うん、味はとても美味しい。


「どうだ?旨いか?」

「うん。凄く美味しいよ」

「だ、そうだぞ。アフロディ」

「…へ?」


なんでそこで吸血鬼の名前が?全然意味が分からない。

疑問符を浮かべる僕に、吸血鬼が何故か頬を染めながら最悪の事実を話し始めた。


「実はねフブキ君、そのウエディングケーキ、僕も作るの手伝ったんだよ。やっぱり愛する人には自分の手料理を食べてほしくてね!いや、この場合は手菓子かな?」

「…ほとんど私が作ったようなものだが」

「そんな小さなことを気にしちゃいけないよ、ガゼル。ああ、すっごく嬉しいよフブキ君!愛してるだなんて言」

「ってないよ、愚鈍吸血鬼」

「…あれ?フブキ君?なんでそんなにフォークを構えているんだい?」


銀ではなく金で出来た無駄に重くて豪華なフォークを手に、僕は爽やかに微笑んで。


「そんなの、投げるために決まってるでしょ」


とても愉快なダーツを開始した。


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