妄想圏外区域 Good Flavor すとととととっ ぐつぐつぐつぐつ ががががががっ 「…………何だろ、この悪夢。フリルエプロン着けた鹿男が凄く手際よく料理してる」 「悪夢とは失敬だな。寝ぼけているのか?」 しゅきーんっ どばばばっ だだーん 料理の音からだんだん遠ざかってきた嫌な音に、ぼんやりしていた思考が少しずつクリアになっていく。 さて、簡潔に状況確認をしよう。 朝起きたらこの屋敷では有り得ない美味しそうな匂いがして、それに釣られて台所…というより厨房に向かったらガゼル君が料理を作っていた、と。 なんで鹿が料理上手なのかはこの際スルーだ。 問題なのは今の彼の恰好。ダサ…個性的な服の上にふわりと纏っている水色フリルエプロン。違和感が行方不明なくらい彼に似合ってはいるけれど、ガゼル君が自分から好き好んで着るはずがない。と思う。 と、いうことは。 「ガゼル君、そのエプロンどうしたの?」 「ああ、これか?アフロディがお前に着せる用に買ってきたそうだが、試しに着てくれないかいと言われてな」 「どうしよう、その料理に青酸カリを入れたくなった」 毒物ぐらいで吸血鬼は死なないだろうけど少しは苦しむはずだ。 九割本気だった僕の言葉を冗談と取ったらしいガゼル君は、再び奇怪な音をたてながら料理に取り掛かった。 . [*前へ][次へ#] |