妄想圏外区域 C 「っ…!」 それは有り得ない。有り得るはずがない。 …そうだ、これはきっと同情。涼野は優しいから、それに決まっている。 「アツヤ」 「な…んだよ」 「言っておくが、同情で言ったわけではないからな。私は、昔からお前のことを愛しく思っているのだから」 「なっ、い、いとし…!!?」 びっくりしすぎて声が上擦ってしまう。 俺が考えていたことを指摘してきただけじゃない。こいつは、涼野は…っ。 「は、離せ!早く!やばいから!」 「何がやばいんだ?」 「分かんねぇよ!分かんねぇけど…っ」 一瞬にして煩く鳴り始めた鼓動が、涼野に伝わってしまいそうで。 変だ、こんなの。 俺は士郎のことが好きなはずなのに。 そこまで考えて、唐突に気付いた。 俺はただ、一人になりたくなかったんじゃないか? その束縛しておきたいという気持ちを、恋と勘違いしていたんじゃ。 ああ、なんだ、そうか。 俺は本当に自分勝手な馬鹿野郎だな。 . [*前へ][次へ#] |