[携帯モード] [URL送信]

妄想圏外区域
B


「…俺のことは放っとけよ」


涙声にならないよう絞り出した言葉に、涼野は小さくかぶりを振った。


「泣いている奴を放っておけるはずがないだろう」

「っ、泣いてねぇ!…俺は一人でいたいんだよ。出てけ」

「それは無理な相談だ。お前を一人にしたらまた泣きそうだからな」

「だから別に泣いてなん…かっ?」


一瞬、何が起きたか分からなかった。

あったかいものが、俺を包んでいた。

さらさらした物が首を擽る。
鼻先が何かに押し付けられている。

涼野に抱きしめられていると気付いたのは、その数秒後。


「涼野…っ!?おい、離せっ!」

「…泣きたい時は泣けばいい」

「涼野っ…、頼むから」

「だが一人では泣かせない。お前は、人一倍淋しがりやだからな」

「離せ…っ、て」

「…吹雪の代わりにはなれないだろうが、私がお前の傍にいる」


音もなく流れてくる涙が、涼野の服に小さな染みを作っていく。

…涼野にそう言われて、嬉しく感じている自分がいる。

まるでそれが告白のように思えて………、って。


.

[*前へ][次へ#]

9/13ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!