妄想圏外区域 部屋 不機嫌そうな、でもどことなく嬉しそうな微妙な表情を浮かべたネッパー君と、どこからか抜け出してきた南雲君と一緒に、僕達は帰路についた。 電車に揺られている内にいつしか空は薄闇に包まれていた。 …暴行にあったことはネッパー君に言わないことにした。 言ったら、ボディーガード代わりに着いてきてくれたネッパー君を責める感じになってしまう。 悪いのは、気配に気付けなかった僕だから。 …アツヤにも内緒にしておかなきゃ。迷惑かけたくないし。もう、終わったことだし。 「…吹雪?着いたぞ」 「え?…あ、ほんとだ」 考え込んでいたらいつの間にかマンションの前にいた。 「あれ、ネッパー君は?」 「さっき駅で別れただろ。覚えてねぇのか?」 「…うん」 考えごとをするとどうも周りのことが疎かになってしまう。 治したつもりだったんだけど…全然治ってなかったみたいだ。 「…お前、そんなにぼーっとしてたらいつか襲われるぞ」 「だ、大丈夫だよ。カツアゲされた時の対処法はアツヤに教えてもらったから」 「いや…カツアゲとかじゃなくて……」 どこか歯切れの悪い南雲君。カツアゲじゃないなら…今日みたいなリンチまがいの暴行、とか? …うん、確かにぼーっとしてたら危ない。気を引き締めなきゃ。 「大丈夫、これから気をつけるよ」 「……ああ」 ちょっと腑に落ちない顔をされたけど、まあいいか。 そうして階段の方に歩いて行く南雲君に着いていこうとして、ふと気付く。 時計を見るともうすぐ8時。 約束の時間まであと少し。 なのに…どうしよう、基山君の部屋、1階だ…。 . [*前へ][次へ#] |