妄想圏外区域
A
鬼がいた。
いや、これじゃ失礼だ。
鬼…般若の形相をした音無が、鋭い眼光で木暮を睨みつけていた。
木暮に視線を戻すと、何やらしたり顔で楽しそうにうっしっしと笑っている。
そしてひらりと身を翻すと、呼び止める間もなく走り去ってしまった。
「ちょっと木暮君!…ああもうまた逃げられた…っ」
「…音無?何かあったのか?」
「あっ、聞いて下さいよ一ノ瀬さん!木暮君ったら毎日私に嫌がらせしてくるんですよ!さっきも、私のタオルが膨らんでて何かなって思って見てみたら蛙がいたんですよ!?もう、信じられない!」
「また幼稚な悪戯を…って、毎日?」
「ええそうです毎日です!教室でも部活でもやられるので大変なんですよ…」
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