妄想圏外区域 鼓動 ドゴッ ガッ バキッ 何度も響いた打撃音。 なのに、覚悟した痛みは感じなかった。 髪を掴まれていた手を離されて、床に鼻をぶつけてしまう。 ごほごほと咳込みながらうっすらと目を開けると。 さっきまで悠然と立っていた男子生徒が皆倒れていた。 倉庫の扉から零れる光が眩しい。 その光を背負うようにして、一つの人影が佇んでいる。 「げほっ…」 誰かは分からない。けど、助けてくれた。 今更ながらに恐怖が身体を支配してぼろぼろと涙が溢れてくる。 我慢した分、それは止まりそうにない。 . [*前へ][次へ#] |