妄想圏外区域
焦燥
時は、少し遡る。
想いが通じ合ったと思っていた。
『恋人』という関係になれたのだと、思っていた。
だから恥ずかしいのを堪えて、告白して、キスをした。
けど。
そう思っていたのは、俺だけ、だった。
「…っくそ!」
やるせない怒りが沸いてくる。きっとあいつは、罰ゲームか何かで告白してきたんだろうな。舞い上がっていた自分が滑稽だ。
…あいつが、吹雪が昔のことを忘れていることにもイラついた。
しょうがない、と割り切ったはずなのに。胸に渦巻く黒い感情が今にも溢れてきそうで。
言葉を吐く代わりに、扉を殴った。
がん、と小気味よい音がして、ほんの少しだけすっとした。
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