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妄想圏外区域
A


「それで、今思い出せたのはどんなこと?」

「えぇと…」


南雲君を見つけたこと、女性に傘を渡したこと、3人と仲良くなったこと、引越しのことを伝えた後熱で倒れたこと。

かい摘まんでそう話すと、基山君は困ったような悔しそうなそんな表情を浮かべた。


「…あのことは覚えてないんだね……」

「あのこと…?」

「ああ、今は気にしないで。多分、いずれ…分かると思うから」

「……?」

「それより、涼野風介…ガゼルのことは覚えてるんだよね?」

「う、うん。…涼野君っていうんだね。彼も基山君と同じ高校なの?」

「いや。風介はここから少し離れた桜嵐学園に通ってるよ。寮生活をしてる…って言ってたかな?」


桜嵐学園。その学園の名前には聞き覚えがあった。そう。そこは…。


「アツヤが通ってるとこだ……」

「弟君が?…へぇ、成程」


何かに納得したように頷く基山君。
そしてふと気付いたかのように。


「そういえば弟君から聞かなかったの?僕達のこと」

「えっと…あの後確かアツヤにも熱が移っちゃって…」

「……だったら、吹雪君と同じように忘れている可能性が高いね。…風介の方も大変そうだ」


あまりにも小さい声だったから、最後の方はよく聞こえなかったけど。

基山君の目に同情の色が浮かんだように見えた…のは、気の所為、かな?


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あきゅろす。
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