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妄想圏外区域
A


鬘を被っていない、髪が長い彼女を見るのは初めてだったし、女性らしい服装に身を包んでいるのを見るのも初めてで。

俺はそんな彼女の登場に、ただただ目を見開くことしか出来なかった。


「来てくれてありがとね、イエロー。それじゃ、後は任せたわ」

「はい」


イエローだけを残して一人階下へと下りていく姉さんは確信犯としか思えない。
勘のいい姉さんのことだ、きっと俺の微妙な心境を察知した上での行動なのだろう。

が。

いきなり部屋に二人きりにされても対応に困るのが事実。


「…悪かったな。お前も自分のことで忙しいのに」


取り敢えず無難な謝辞を言うと、イエローはふわりと笑って。


「いえ、気にしないで下さい。シルバーさんが合格するためのお手伝いがしたいと言ったのは、僕ですから」


頭上で結い上げられた髪がさらりとなびいた。

…イエローの言葉が頭の中を駆け巡る。内容は理解したが、感情が追い付いてこない。


「それじゃあ始めましょうか」

「…あ、ああ」


漸く搾り出せた声は、自分でもびっくりするくらい何とも情けないものだった。


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あきゅろす。
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