妄想圏外区域
抱擁
「あ……」
断片的に思い出した過去の記憶。
所々の記憶は靄がかかったようにぼやけていてあやふやだけど、大切なことは分かった。
「バーン君…が、南雲君……」
思い出の中にいる赤髪金眼の少年は、今の南雲君をそのまま小さくしたようで。
「…思い出した?ふふ、その呼び方も懐かしいね」
そして、基山君も。
「グラン…君…?」
にこりと笑う基山君に、罪悪感が沸き上がってくるのを感じた。
どうして僕は、こんな楽しくて幸せな記憶を忘れていたんだろう。
南雲君は覚えていてくれた、基山君は気付いてくれた。
僕は。
僕は、忘れて、いた。
「吹雪君が今考えてること、当ててあげようか」
「……」
「記憶が朧げな自分を、責めているよね?」
「……っ」
「それは君の所為じゃない。記憶というものは時が経つにつれ薄れていくものだし、それに君は最後の日に高熱で倒れた。…色んなショックが重なって記憶を忘れてしまうことは、哀しいことだけど悪いことじゃない」
これから一緒に、ゆっくり思い出していこう?
そう言ってくれた基山君に、僕は何度も頷いた。
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