妄想圏外区域
B
曲がり角を曲がったところで、吹雪はぎょっとして足を止めた。
「兄ちゃん?いきなり止まってどうし…って、うわっ!?」
雨音に負けないアツヤの声が響く。
その声ではっと我に返った吹雪は、慌てて『それ』に近寄った。
傘も差さず、塀にもたれかかるようにして身を投げ出している、自分達と同じ年頃の赤い髪の少年に。
「…だ、大丈夫!?」
小さな青い傘に彼が入るようにしながら、吹雪は声をかける。
反応は、ない。
怪我をしているのかと思い、しゃがみこんで覗きこんでみるも、これといった怪我は見当たらない。
「…兄ちゃん、そいつ…生きてんの?」
恐る恐る、といったように聞いてくるアツヤに吹雪は血の気がひいた。
決して弱くはない冷たい雨に、凍てつく気候。
怪我はない彼の顔は、しかし生気を失ったかのように青白くなっていた。
震えながらも左胸へと手を伸ばす。
ここには大切な心があるんだよ、と教えてもらった場所にひたりと手を当てる。
──…とく、とく
濡れそぼった服の上から感じた鼓動にほっと息をつく。
そうだ、助けを呼ばなくちゃ──と思った吹雪の耳に、バシャバシャという急いたような足音が近付いてきた。
.
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!