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妄想圏外区域
A


「──…大体の事情は分かったよ」


一通り話し終えて、少し冷えたキャラメルミルクに口をつける。

基山君は眉間に少し皴を寄せた後、そろりと言葉を発した。


「彼…南雲はこう言ったんだよね。『ずっとお前だけを想ってた』って」

「…う、うん」

「……暴露しちゃうとさ。僕、南雲の幼馴染みみたいなものなんだ」

「へっ…?」

「だから南雲のことはよく知ってる。そして今の吹雪君の話を聞いて納得したよ」

「え…と?ごめん、話が見えないんだけど…」

「成程、君だったんだね。随分変わってるから分からなかったよ」


基山君が何を言いたいのか、さっぱり分からない。

ただただ首を傾げる僕に、基山君は困ったような微笑みを向けてきた。


「…恋人云々の話はきっとどこかで解釈の相違があったんだろうね。僕から言ってあげてもいいんだけど、その前に聞いてほしいことがあるんだ」

「聞いてほしい、こと?」


そう、と頷いた基山君の瞳はどこか遠くを見つめていた。
まるで、何かを懐かしむような。
そんな、瞳。


「…僕達は昔、遭ったことがあるんだよ。かなり昔のことだから忘れてるかもしれないけど、確かに出逢った。…覚えてないかな?おひさま園、って孤児院」


おひさまえん


その言葉を聞いた時、僕の脳裏に懐かしい光景が広がった。


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