[携帯モード] [URL送信]

妄想圏外区域
B


吸い込まれるような瞳、という表現はよく聞くけど、僕は今将にその瞳に見据えられていた。

上手く言葉が、出ない。


「…確かに俺からは言ってなかったな」

「………ぇ」


何を、と言おうとした唇に、柔らかいものが触れた。


「…好きだ、吹雪。ずっとお前だけを想ってた」


思考が止まったのは、一瞬。


「……っ!!」


我に返ると同時に、南雲君を突き飛ばしてがむしゃらに屋上から走り去った。

何あれ何あれ何あれっ…!!

手で口元を隠したまま階段を駆け降りる僕は、はたから見たら凄く怪しい奴なんだろうな。なんて頭の片隅で冷静に判断している自分がいるけど、表に出る感情は少しも制御出来ない。

顔が、全身が、熱い。

走って走って、ユニフォーム姿のままなのにも気付かずに学校を飛び出して、とにかく走って………


──どんっ


「っわ、ごめんなさ…」

「いや、こっちこそごめ……あれ?君は…」


聞き覚えのある声と、不意に感じた既視感。


「……あ」


ぶつかったのは、この前もぶつかったスーパーなサイヤ人の髪型をした、あの人だった。
今は普通の髪型に戻っているけど、今の僕はそこまで頭が回らない。


「…何か、あったみたいだね」


図星だったから思わずびくりと肩が震えてしまう。


「話ぐらいなら聞いてあげるよ」


…南雲のことでしょ、と続いた言葉に僕は目を見開いて。
少し逡巡した後、小さく首肯した。


.

[*前へ][次へ#]

35/141ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!