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妄想圏外区域
A


それからのことは本当に嵐のように過ぎていった。
空はもうオレンジ色に染まっている。

…あの後、矢次早に質問(主に南雲君とのこと)されて、誤解を解こうとした矢先に自己紹介が始まって、不良だとは思えない程のフレンドリーさに驚いている内に、呆気なくお開きになった。

ただ1人、ヘッドバンドを着けていた男の子に睨まれたような気がしたけど…、気の所為かな?


「大丈夫か?…悪いな、あいつら悪気はねぇんだ」

「う、うん。大丈夫…」


心配そうに僕を覗き込んでくる南雲君。
夕日が金色の瞳に反射して凄く綺麗。とくん、と胸が鳴る。……あれ?何だろう、この気持ち。


「…あのさ、吹雪」

「うん?」

「サッカー部潰すだなんて言って、悪かったな」


その言葉は僕じゃなくて木暮君やキャプテンにするべきだよ、と言いかけてそれよりも先に言わなきゃいけないことがあるのに気付く。

ずっと流されてきたけど、きっと傷つけてしまうだろうけど。


「…南雲君。本当にごめん。どこで誤解があったのかは分からないけど、僕は………」

「…吹雪?」


どうしよう、何て言えばいいのか分からない。

貴方のことが嫌いです?
ううん、嫌いな訳じゃない。そんな気持ちは微塵も沸かない。

別れて下さい?
いや、これじゃあ恋人だって認めたことになっちゃう。

…そうだ、恋人になった覚えがありません。うん、これでいこう。


「僕っ…、南雲君と恋人になった覚えが、なくてっ」


つっかえながらも一気に言い切った。
反応が怖くて俯きながらぎゅっと目を瞑る。

殴られるのは覚悟の上。
多分この誤解を生んだのは僕の所為。
そして誤解とはいえ騙していたことに代わりはない。

だから。


──とん


ゆっくりと両肩に優しく置かれた手が理解できなくて、反射的に顔を上げた。


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