ええっ!?親撮影のヌードは、名誉毀損!? ええっ!?親撮影のヌードは、名誉毀損!? あんたらも案外ロマンチストなのねとカグヤが笑う。見飽きているとばかりのあしらいだった。 っていうかカグヤったらなぜ塀の上に居るんだろう。 「──カグヤの方は、みんなは? 」 「あー、それが、さぁ」 カグヤが塀に座り、言いにくそうに後頭部に手を回しながら言うのは、ちょっと意外な話だった。 「今、私ら揉めてる」 「え、誰と」 「観察屋」 「観察屋と!?」 アサヒが反応する。カグヤはその勢いに少し驚きながらも答えた。 それもその通り。アサヒは元観察屋だ。秘密を知りコリゴリに消されるところだったように、実は今も追われる身で周りの情報には敏感である。 「どういうこと!? 話して!!」 「いつものようにあのツインテの子…… 網端めぐめぐっていうんだけど。 今、塀の向こう側の公民館のとこに、観察屋と市当局が来て取り調べみたいなのしてるの」 「なにか、観察屋を傷付けることをしたの?」 カグヤが首を横に振る。 「──あの子、盗撮した素材から 部屋の中や、生活をアニメにされてるらしくて」 そういえば私も、バラエティーとかの下地になったことがある。 あれはBPO問題になったんだっけ。 「観察屋が撮った写真を、外国に委託してるアニメ会社とかで使ってるのね、それで、そこの愚痴を言ったのよ、それで……作家から会社の名誉毀損だって。その作家が親」 なんじゃそりゃああ!! 「っていうか、親が? 名誉毀損!?」 「そう! 作家の名前に泥を塗ってありもしない噂を立てられたっていって! めぐめぐが素材になることよりも自分の名誉が毀損されることを考える親なの」 うーん…… 親ってそんなもんなのかなぁ。 「ちなみに新刊は『今日子の婚姻届』 隠館厄介からの次なる依頼は、恋にまつわる「呪い」の解明? だって……」 「煽りに来てるね」 私は率直な感想を述べた。 「だね……対立を煽りに来てるよね。外面だけがいいから……」 女の子が少し悲しそうに質問する。 「カグヤたちは今、その、取り調べを待ってるの?」 「そ、私や、捕まってないみんなは公民館周辺に集まって、めぐめぐが出てきた瞬間に抗議しようか話してるとこ。公民館はよく学会も定例会やるしね」 そうなんだ…… カグヤは肩に網を抱えたままニッと笑った。 「まっ、それまでは、漁だよ☆」 ハニートラップ漁。 みんなになぞのこなを撒いて、寄ってきたスキダの群れを網で囲んで絡めとる。遠くの方から、仲間のものらしい、急かす声がしていた。 スキダは海の魚ではなくまるで空気よりちょっと軽いガスのように勝手に浮いているものなので、囲んで引っ張ればついてくる場合もある。 かといって空高く飛ぶことはなくて、人間のそばに回っていた。 「そっか」 「──あなたたちはこれからどうするの?」 カグヤに聞かれて、私は胸を張って答えた。 「椅子さんを、迎えに行く! それから、私の家に帰るんだ!」 ──────────── 投稿日2021/2/20 17:14 文字数1,048文字 [*前へ][次へ#] |