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小説
嘘つきの恋
人を騙す人の恋は受難なものだったりします。


「やぁ、お嬢さん」

ブラブラと歩いているのを発見して人混みの中から顔を笑顔にして現れる。

「…またアンタか」

足止めを喰らった方は眉間に皺を寄せながらげんなりと肩を落としていた。

「またじゃないよ。偶然だよ」

その言葉に少女は更に皺を増やす。

「へぇー。連日会ってるのにアンタは偶然って言うのか」

「いやー、凄い偶然もあるものだねぇ」

悪びれのない口調で応えると怒りのボルテージが少し上がるのを感じた。

「そんな偶然があってたまるかぁ!!」

怒鳴り声に人波の視線がこちらに向く。
その羞恥に耐えらなかったのか手を掴まれ人目を避けるようにビルとビルとの間の横道に連れていかれた。

「おや、積極的」

「やかましい!!」

茶化すと直ぐ様手を振り払われた。名残惜しそうに手を見つめる。

「折角進んで手を繋いでくれたのに」

「違う!!」

眼前の少女とは対照にまだニコニコと笑っていることにどうやら腹が立つらしい。

「なんで私に付きまとうんだよ」

「好きだから」

あっけらかんと言った言葉に少女の表情が怒りから呆れに変わった。

「相変わらず信じてないね〜」

明から様な様子に職業柄、無意識に(こういう人間は騙しやすいなぁ)と吟味したりしている。といっても騙す気は毛頭ないが。

「詐欺師の言葉を信じられる訳ないだろ」

溜め息と共に呟きが漏れる。

「君は騙したこと無いけど」

「今現在騙されそうだ」

警戒心剥き出しの真っ直ぐな反応に作り笑いではない笑みが浮かぶ。

「騙すならもう少し別の手でやるよ。少なくともこんな回りくどい騙し方はしない」

「って事は別の手段で騙すって事だ」

あくまで信じる気はないらしい。

「だから騙す気はないって…」

何度口にした台詞だろうか…。そのあと返ってくる言葉はお決まりだろう。繰り返しだから。

「嘘吐きなんて信じない」

…予想通り。一言一句そのままで、よくこのやり取りが飽きないなぁと思うほど。

「とにかくアンタが詐欺をし続ける限りアンタなんか大っ嫌いだ!!」

距離は縮まらないし、関係は平行線。でもこの世界で生き続ける事に誇りを持っているからその取引は飲めない。
だから、地道に口説いていくしかないみたいだ。詐欺師には滑稽なほどの真実で。
この子に信じてもらうまで。

「いい?今日あと1回でも目の前に現れたら警察呼ぶからね!!」

携帯の画面に110番が表示されているのを見て両手を軽く挙げて降参を示した。流石に警察を呼ばれたらマズイ立場だ。
今日は諦めよう。

(『今日』、現れなきゃいいんだし)

また会ってもなんだかんだ言いながらきちんとこんな自分の相手をしてくれるのだろう。あの正義感の強い、優しい子は。
怒り肩で去っていく後ろ姿を柔らかな眼差しで見送った。



Please trust me.
Because only this feeling is not a lie.
Believe only it.



‡END‡












英文の和訳

“どうか信じて。
この気持ちだけは嘘ではないから。
それだけは信じて。”



意味なく英文(笑)



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