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【ふしぎ遊戯】笛の音の行方
【ふしぎ遊戯】笛の音の行方~短編完結ドリーム~
【前書き】

これは、一回目の朱雀を召喚しようとした時から始まります。
あみぼし視点。

召喚失敗作戦から、忘却草によって記憶が消されるまでのお話です。

本編で、美朱に再会するまで何があったか・・・
妄想してみましたw

では、どうぞ!

*本当はドリーム設定なのですが、始めたばかりの現時点では、読者様に名前を変えてもらう機能のやり方がわからないので、相手役名は固定の『桜林』とします。すみませんm(T T)m*













美朱「四宮の天と四方の地…」
今朱雀を呼び出す儀式が始まろうとしている。
そして巫女が祝詞を唱え終え、巻物を燃え盛る炎に投げ入れる。
しかし炎の音が聞こえるだけだ。

美朱(何も起こらない…?)
鬼宿「なぜだ…?何も出てこないぞ!」
不意に超音波の様な甲高い音を耳にする…その音の主は…
美朱「張宿?!い…痛っ…(頭が…頭が割れる!!)」
張宿「…失敗したんだよあんたたちは。
朱雀はもう呼び出せ無い」
冷めた口調で信じられない言葉を口にする張宿…?
美朱「張宿?!あなた…!?」
張宿「…僕が何の為にいつも笛を吹いていたかわかりますか美朱さん…」
次々と信じ難い言葉を発し、張宿が最後に口にした言葉は…

『…青龍七星が一人「あみぼし」!
これが「別魂の曲」…』

右肩に青い文字が浮かぶ…。
あと少しで朱雀の巫女もろとも七星士達を笛の術に巻き込む事ができたが本物の張宿の草の音によって音波を崩され、朱雀七星士に追い込まれ今彼の足元には大雨で増水した急流が差し掛かっていた。
反撃するあみぼしに向かって美朱は、
『あんなにきれいで安らぎ与えたりできる人が人を傷つける為に笛は吹きたくないはずだよ…』
その時彼の中で何かが目覚めた気がした…何かに気が付いたのだろうか…??
そう思った瞬間足元が崩れ…美朱の元に残ったのはあみぼしの笛だけであった…












どれ程の時間が経ったのだろう?
気がついて目を開けるとレンガ作りの天井が見えた。
寝床の壁には異国の模様が施されている。
あみぼし「生きて…る…?」
気が付くと全身がだるくて起き上がれ無い。
まるで何かに縛り付けられてるかの様に。
あみぼし「…角宿…」
無意識の内に彼は弟の名を呼んだ。
━角宿。あみぼしのたった一人の大切な家族。
倶東の戦争以来遺児になり、二人で過酷な運命を共にしてきた、大事な双子の弟。

「懐可!!」

どこからか少女の声がする。
あみぼしはビクッとして声のする方へゆっくりと顔を向けた。
そこには異国の服をまとった、自分と同じ年位の少女がこちらへ走り寄って来る。

少女「懐可…懐可ッ…戻って来てくれたぁ…」
あみぼし(『懐可』…?僕の事を誰かと勘違いしてる…?)
少女「あたしの事覚えて無いの…?!
桜林だよ!!
幼なじみでよくいっしょに遊んでて…将来は一緒になろうねって…約束したじゃない…」
桜林と名乗る少女はそのつぶらな瞳に大粒の涙を浮かべた。
あみぼしはそっと優しく指でその涙をぬぐった。
あみぼし「そんなに泣かないで。可愛いカオが代無しだよ。」
あみぼし(どうやら『懐可』は桜林と恋人同士だったんだ…それで何かの出来事で彼は行方不明に…?)
桜林は顔を赤くしながらパッと立ち上がり、あみぼしに無邪気な笑顔を向けた。
桜林「おじさん達呼んでくるねッ」

その瞬間あみぼしの目には朱雀の巫女と桜林の姿がかぶった。

美朱『あんな優しい笛を吹ける人が人を殺すなんてできないはずだよ!?』

自分は間者として朱雀七星士の中に入り、巫女達をあざむいた…。
あみぼし「どうしてあんなに簡単に信じるんだ…。」
朱雀のみんなはどこか青龍側と雰囲気が…違った…暖かかった。
皆友達みたいにはしゃいだり、互いを思いやり、心地良い…自分の笛をとても気に入ってくれて…美朱さんにはどこかの民族音楽を頼まれたこともあったっけ…。
あみぼしは、ふっと微笑した。
あみぼし「もう…戦いたく…無い…。」
そう呟いたあみぼしの肩は微かに震えていた。

「懐可!気がついたか?!」
あみぼしは笑顔で振り向いた。
あみぼし「…はい!」
そこには、父と母を思い出させる様な、優しそうなおじさんとおばさんが、涙を浮かべてこちらへ駆け寄る。
「あぁ…戻って来てくれたんだね…懐可…!」
『懐可』の母と思われるおばさんは、体を震わせ、あみぼしの胸で泣いていた。
そして『父』と思われるおじさんは、あみぼしに暖かい汁の入ったお椀を差し出した。
父「お飲み。桜林が心を込めて懐可にと作ってくれたよ。」
桜林「もぉ懐可ったら、そんなにお椀を見つめてないでさぁっ量は間違えてなんか無いわよ!失礼しちゃう!」
あみぼし「ありがとう!!」ゴクゴク…
桜林「そんな一気に飲まなくてもっ」
あみぼし「…美味しいよ!ありがとう桜林」

あみぼしは決意した。
このままこの家の息子になってしまおうと。
それに一人欠ければ、青龍だって呼び出すこともできないはずだ…。
その方が平和かもしれない。
角宿も…宮殿に仕えるようになって…生活には不自由しない。
今更僕がまた青龍に戻ったら…戦わなくてはいけない。
朱雀七星士や美朱さんと…。
このままでいれば…何事も無く過ぎるはずだ…
すまない…角宿…ッ。












助け出されて数日たち、あみぼしは何かを作っていた。
そしてそれが完成しかけた頃、桜林があみぼしの足元にちょこんと座って来た。

桜林「何つくってるの?」
不思議そうに覗き込む。
あみぼし「先にあの場所へ行っててくれないかな?
すぐ向かうからさ!」
好奇心を抑え、桜林は言われた通りにあの場所へと向かう。

―数分後―
大きな木の下で桜林が座っているのを見つけ、あみぼしは駆け出して行った。

あみぼし「ゴメン!待たせちゃって!」
桜林「いーのいーの!
それより何つくってたの〜??」
あみぼし「うん、目つむって!」
桜林「えっ…///ハ…ハイ…///」
変な期待に胸が高潮する。
次の瞬間…


━━…丘中に、キレイで透き通る様な笛の音がする。
桜林「…懐可?!」
ぱっと目を開ける桜林。
それと同時に笛の音も止む。
あみぼし「あっダメだよ目開けちゃ!」
ツン、と人指し指で桜林のオデコをつっつく。
桜林「あっ…ごめんなさい!
…もっと吹いて!もっと懐可の奏でる笛…聞きたいな」
あみぼし「うん…じゃお言葉に甘えて…」

時が経つのも忘れる位あみぼしは吹いた。
青龍の事、朱雀の事、角宿の事…。
悲しくも楽しくも、色々な感情が折り重なってるように聞こえた。
そして彼の中で、青龍七星士として笛を吹くのはこれで最後…これからは『懐可』として吹いていくと決めたのだった。

気が付くと、周りは人だかりだ。
皆、笑顔で気持ち良さそうに、自分の音を聴いてくれている。
これが、本当の幸せなのかもしれない…。
皆が幸せになれる…そんな笛をこれから吹いていこう………。


☆☆☆


西廊国の生活にも慣れてきた頃、こんな噂を耳にした。

━人喰いイタチ現る━

ここでは今まで平和に暮らして来て、何も悩む事は無かった。
そんな生活をおびやかすものは許さない。
あみぼしはそう思った。

桜林「だめッ」

丘中に声が響いた。いつもの木の下だ。
あみぼし「だって、誰かが行かなくちゃいつ村に襲いに来るかわからないよ。
犠牲が出てからじゃ遅いんだ!」
桜林「懐可が死んでからじゃ遅いの!!」
あみぼしの片腕をぎゅっと抱く。
そんな桜林に愛おしさを感じ、優しく手を包み込む様に握った。
あみぼし「わかった…ずっと傍にいるから…ね?」
まるで幼い頃の弟をなだめるように、優しく呟いた。安心しきったのか、桜林はあみぼしの肩に頭をのっける。

愛する者を失う気持ちはよく知っている…
だからあみぼしはこの時あえて反論しなかった。
だが、この数日後、悲劇が訪れるとはこの時のあみぼしには思ってもみなかったのだ。




数日後、村人が何人かイタチに襲われた。
かなり狂暴なヤツらしい…。
村は静かになった。
毎日人々は怯え、前の活気のあった村じゃなくなった。
あみぼし(…僕がこの村を元に戻して見せる…!)
あみぼしはひそかに思い、夜、家を出ようと決心した。
最近の夜の村は不気味な程ひっそりと静まりかえっていた。
武器を持ち、布を羽織り、静かに家を出た。
岩場へ踏み入れ、神経を集中させながら歩いた。

「きゃあぁぁっ…」

切り裂くような悲痛の叫び声が聞こえ、悲鳴のする方へ走った。そこには━…

あみぼし「桜林…!!??」

そこには、首を鋭い爪で裂かれ、血だらけ桜林がうつぶせになり、倒れていた。

あみぼし「何で…何でこんな所にいるんだ!!」
慌てて応急手当を施そうとするが、どんどん血が溢れてくる…。
血の気が無くなる桜林をあみぼしは抱き抱え、無我夢中で走って村へ向かう。
あみぼしの腕の中で桜林は呟いた…。
桜林「ごめ…ね…迷惑…かけちゃっ…て…」
か細い声があみぼしの心に響く。
あみぼし「喋るな!もうすぐ…着く!!」
あみぼしの言葉を無視して桜林は喋り続けた。
桜林「懐可と…離…たく無かったの…最近…様子…おかしかっ…たから…見張って…たんだぁ…」
桜林の呼吸は荒くなる…。
もぅ血があみぼしの上半身に染み付いていた。
あみぼし「ハァ…ハァ…もぅすぐ…あと少しだ…!!」

━…助けたい。
今のあみぼしにはそれしか考えられなかった。
桜林「ごめ…ね…かえって…メーワク…かけちゃ…たね…」
力の無い笑顔を振りまく桜林。
そこでまた、あみぼしの中で朱雀の巫女とかぶった…。
鬼宿が倶東にいて、ひどい仕うちをされ、追い込まれた美朱の力の無い笑顔と…。
自然と、あみぼしの足は止まった。
そしてそこに膝から座り込み、桜林を見つめる。
あみぼし「桜林…大好きだよ…だから…だから目を閉じないで…いつもみたいにその大きな瞳で僕を見て…桜林…ッ!!」
あみぼしは涙を浮かべながら必死に訴えた。
桜林「あたしも…だいす…き…だ…よ…」
辺りは静寂に包まれた。
そこには桜林の亡がらを抱き抱えるあみぼしが一人いるだけ…。








桜林の葬式が終わった後、あみぼしは勢い良く家を出て行き、父と母に告げた。
あみぼし「父さん母さん!ヤツを…退治してきます!!
誰も岩場に入れさせないで下さい!!」
父母「懐可!…懐可ーーーッ!!…」

今のあみぼしには『怒り』と『復讐』しか感情が無かった。
自分を慕ってくれた者が目の前で死に、今自分は何ができる?
大切な人を奪ったヤツへの復讐、そう考えた。










ガラガラ…
ハッとした。何かが落ちる音。
岩の影から見ると、そこには弱々しく、体を震わせ泣いてる少女がいた。
足をくじいたらしく、動けない状態だ。
助けなければ…そう思った瞬間、目を疑った。
少女は紛れも無く、朱雀の巫女。
何故こんな所に!?
そうか…まだ青龍と朱雀の戦いは終わってなかったのか…。
━でも今の自分には関係無い。
今の自分は…磨汗村の『懐可』なのだから。
そう決心し、朱雀の巫女を助けに行こうとした瞬間…目の前にあのイタチが身動きのとれない巫女に襲いかかろうとしているではないか!
あみぼし(もうこれ以上…人が死ぬのを見たくない!!)
あみぼし「…こんな所にいたのか。やっと見つけたぞ。お前だけは…殺す!」
…朱雀の巫女はやはり驚きと困惑した表情でこちらを見ている。
だがそれに構わずあみぼしはイタチに向かって言う。
あみぼし「お前だけは逃がさない━この場で息の根を止めてやる!!」
武器として持って来た剣を振りかざし、イタチに狙いを定める。
あみぼし「伏せろ!!」
ビュッ…
イタチ「ギャアアアア…」
見事イタチに命中し、その場に崩れ落ちる。
そして美朱の安否を確認した。守るように介抱した。
あみぼし「大丈夫だった!?大イタチだよ。ヘタに動いてたら襲われてた。」
美朱はまさかあみぼしが生きていたとは思うまい。
角宿かと思いきや、イタチから自分を守ってくれて…もう何が何だかわからない様子だ。
あみぼし「大丈夫?手貸そうか」
美朱「ど…して…?」
問い掛けた瞬間、美朱は倒れた。
あみぼし「えっ…ちょっと…きみっしっかりして!!」
よっぽど疲れてたんだろう。村へ連れて帰った。
そして三日間朱雀の巫女は眠り続けた。
目を覚まし、やはり角宿だと思ったらしい。
笛の音を聴かせてあげた。

次の日は巫女を外に連れ出した。
食事中巫女は泣いてしまった。
結婚の話をして、きっと鬼宿さんの事を思いだしたのだろう…。
何故二人が今離れ離れなのかは聞いてないが、きっと何か理由があるに違いない。
気分転換にと散歩へ出掛けた。
お気に入りの『あの場所』へ連れて行ってあげた。
そこで巫女の今の状況を聞くことができた。
あの後…色々な事が起こったらしくて…僕は大変な事をしてしまったのだと…改めて気付かされた。


━今何ができる??どうすれば償えるのだろう??

笛を…吹いた。
紅南国でいつも吹いていたおなじみの曲。
あみぼし「元気と勇気が出るように」
巫女は微笑み、「ありがとう」と言ってくれた…。


その後巫女は『挑む』事を教えてくれた。
彼女にこんなパワーがあったなんて…
こんなにも意志が強いなんて…。
僕は今まで逃げてた。
戦いからも味方からも敵からも、角宿からも…
僕は一人でのうのうと平和に暮らして…
その間に何人もの人達が血を流し、この世をまっとうしていったのか。
これが僕のしたかった事?
違う!こんな…こんなハズじゃ無かった。


今同じ青龍七星士の氏宿と戦っている…
そう…『仲間』…
仲間なのか?
僕は…どうすればいいんだ…
美朱さんを護りたい…
体が上手く動かない…このままでは『仲間』の氏宿に殺される…。
いや、こいつは仲間なんかじゃ…無い…ッ
そう思いながらも腕を貫かれ、身動きが取れなくなった…。
ドスッ
鈍い音がして、見上げるとそこには…

氏宿「角宿!!あ…なた…は」
角宿「兄キに…触るなーーー!!兄キから離れろーーーッ!!」

角宿の感情でその武器は目標物を貫いてしまう。
氏宿を殺した後、角宿は兄の元へ駆け寄る。

…どうして戻って来なかったんだって怒られた…
それは戦いたくなかったから。
人が死ぬのを見たく無かったから。
そうだ、角宿も誘ってみよう。
一つの平和な村の住民にならないかって…。

…でも角宿は少し見ない間に変わった…
あのお兄ちゃん子だった角宿じゃ無くなって、今は一人の女性を愛す様になっていたんだ…。

一方角宿は思った。
たった一人の家族のあみぼしには幸せになってもらいたい…。
小さい子供みたいに、つねに自分の元へ置いとくんじゃ無くて、本人の望む所へ、磨汗村へかえした。
兄がそこを望み、幸せになってくれるなら。
優しい兄に戦いは向かない…。
苦しみながら生きていくなんて、そんな姿は見たくない。
幸せになってほしいから…

さよなら…。














ここは西廊国の国境近くの磨汗村。
ある家に、村でも有名な、笛吹名手がいた。
左中指と薬指に包帯をしている。
今日も『元気と勇気』を皆に与える為、笛を吹いていた。

急にその音がピタリとやんだ。

母「どうしたんだい懐可!」
懐可と呼ばれる少年はポロポロと涙を流す。
懐可「…いや…急に胸が…苦し…まるで自分の半身をえぐり取られたような衝撃が…」
そう言いながら涙をぬぐった。
そして微笑み、
懐可「いや…逆だ。
自分の失ってた半身がやっと戻って来たみたいな…
なぜなんだろう…ヘンだな…もう平気です父さん母さん」
母「そうかい…失ったっていやぁ今紅南国と倶東国が戦になっているからね。
人が大勢死んでるんだ」
父「そうだ懐可…鎮魂曲を送っておやり。
…早く争いが無くなるように」
懐可「…はい」
その笛は悲しげに…切なく…
かつて双子の弟がいたあみぼしによって、送られたのであった。

その時、弟角宿は、巫女達の世界で朱雀七星士の鬼宿によって散っていった…。
一人の愛する女性、青龍の巫女、唯の名を呼び、その短い生涯を終えたのだ。
そして、懐可の右肩には二度と『あみぼし』の字は浮かび上がることは無くなった…。
それは、彼にとっての一番の『幸せ』なのかもしれない…。













俊角「父ちゃあん兄ちゃあん待ってよぉ〜」
父「男の子なんだからもっとしっかり歩きなさい」
俊角「歩いてないよぉ走ってるんだよぉ」
こう徳「俊角はしょうがないなぁ…」
兄はにこっと微笑むと、弟の元へ駆け寄り、双子の小さな兄弟は一緒に手を繋ぐ。
そして弟と一緒に歩いていた母も一緒になって、弟の隣に母と兄が、兄の隣に弟と父が。
ゆっくり…ゆっくりと歩いていったのだった……。

〜完〜



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