ハルヒSSの部屋
涼宮ハルヒの戦友どっかーん 1
ハルヒ<ちんまり纏まってるのなんて性に合わないわ!ね、キョンもそう思うでしょ?
キョン<頼むから短編作家さんに喧嘩を売る様な真似は止めてくれ……orz
このSSが長くなっているのは只単に作者に短く纏める技量が無いだけなんだから……。
ハルヒ<さぁ、アタシの出番が来たわよっ!
キョン<人の話を聞け!
 
 
「えー、では今から第二十六回SOS団臨時会議を始める」
ぱちぱちと疎らな拍手。楽しそうですね。ですが拍手は要りませんよ、朝比奈さん。
今回は結構シリアスな内容だったりしますから……って聞いてる?
「司会進行は都合により俺が務めさせて貰うが、異論は無いな、古泉」
「……其処で名指しですか」
悪いんだが、お前以外に異論を出しそうな奴など、この場では見当たらんぞ。
古泉がやれやれと首を振る。お前は知らんかも知れんが、今現在最も気苦労を強いられているのは誰よりも俺だったりするんだ、優男。
まぁいい。兎に角話を進めさせて貰う。
「えー、今回の議題だが」
俺は背中のホワイトボード(鶴屋さん提供。何故こんなものがファンタジー世界に在るのかは不明)をばんっと叩いた。慣性の法則に従ってひっくり返るホワイトボード。
「之だ」
今一度ホワイトボードを叩いて、其の動きを止めてやる。表を向けられた其れには俺の字ででかでかとこう殴り書かれていた。
 
「魔王が『ジョン=スミス』を名乗っている件について」
恐らく、之が今回の事件の鍵だろう。そう、俺は確信していた。
 
まぁ、皆様には「ジョン=スミス」を名乗るって事が一体如何いう事なのかは一々説明しなくてご理解頂けると思う。
なので此処では、古泉他事情知らない面子の為に一通り、一年前の七夕に俺を襲った事件を説明してやる程度に留めておく。
嗚呼、鶴屋さんには色々と理由を付けてこの場は辞退して頂いたので、現在この部屋に居るのは俺、朝比奈さん、長門、古泉、朝倉の五名である。
鶴屋さんが居ても邪魔にしかならないからな。いや、彼女が悪いのではないぞ?
話が脱線した。
俺が皆に語った内容は、まぁ掻い摘んだものである。全てを詳細に説明していると長くなりそうだったし、又、恐らく其処までしてやる必要も無いと踏んだので適当で済ます。
しかし、重要だと思われる部分に関してはポンコツ脳味噌の記憶を総動員して話した。
曰く朝比奈さんの上司(朝比奈さん本人とは言ってはいけないのはお約束だ)に請われて三年前のハルヒに会いに行った事。
其の場で俺がハルヒと話した内容。宇宙人は実在するとか云々。
そして、其の時に出会った「俺」を探すという理由でハルヒが北高入学を決めたのだと思われる……といった事をだ。
「成る程。涼宮さんがこの学校を選んだ裏にはそんな事情が有ったのですね」
「はうー、全然知りませんでしたぁ」
古泉は兎も角として、貴女は事件の当事者なんですけどね、朝比奈さん。
「とまぁ、色々と飛ばし飛ばしでは有るが、何となく事情は伝わったと思う。で、この事件に関する意見が欲しい。如何だ?」
「読めてきましたよ。其処で貴方は涼宮さんに名前を訊かれたのではありませんか?」
古泉が目を閉じて訊いてくる。多分、コイツは今目まぐるしい速さで思考をしているのだろう。
「嗚呼」
「そして貴方が問い掛けに対して名乗った名前。其れが」
「ジョン=スミス?」
朝倉、古泉の台詞を取ってやるなよ。ほら、後ろからめがっさ睨んでるぞ。まぁ、古泉だし別に良いが。
「そういう事だ」
「だからキョン君は朝の鶴屋さんの一言に対して奇声を放ったのね」
「奇声って、朝倉。お前な……」
俺は溜息を吐いた。其処で一同沈黙。
古泉は例によって目を閉じて考える人のポーズ。朝倉は場の空気を読んでか息を潜め、朝比奈さんはおろおろと其の場に居る全員の顔を見回している。
 
静寂を破ったのは、之まで沈黙を保っていた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス。長門だった。
「推測され得る事態は三つ」
長門が話し始めた内容は俺の予想を二周半ぐらい飛び越えたものだった。
「一つ目。貴方とは関連性が無い場合」
長門は抑揚を付ける事無く、けれど良く通る声で話し始めた。
「この場合は其処に居る朝倉涼子の様に、涼宮ハルヒによって創られた偶像であると考えられる。恐らくは彼女の理想を具現化した存在」
其れが何でジョン=スミスなんて名乗って魔王やってるんだよ。
「……恐らく之は涼宮ハルヒにとってのイニシエーション(通過儀礼)。
彼女が過去を過去として受け止める事を望んだ、其の結果だと推測する」
「成る程」
其処で納得してる古泉、解説頼む。悪いが俺には長門の言っている事が九割ほど理解出来ん。
「殆ど全部じゃないですか」
古泉が溜息を吐く。馬鹿ですまんな。しかし、お前みたいに飲み込みが良くなる為には変態的能力を身に付けなければならないというなら、馬鹿で結構だ。
「……良いですか?之はあくまで推測の意味を出ないという事を理解して聞いて下さい」
何でそんな前置きが必要なんだ?
「いえ、貴方が恥ずかしさの余り僕に殴り掛かってくる可能性を事前に取り払っておいただけです」
嗚呼、聞かなきゃ良かった。聞きたくなかった。続きを聞きたくない。聞かなきゃ話が見えない進まないのは分かっているが聞きたくない。
「では、僕が理解した範囲でお話します。間違っている所が有りましたら、長門さん、訂正を……宜しく」
「分かった」
古泉の説明好きを今ほど憎く思った事は無い。つか、この二人が息ぴったりなのは何でだ? 嫌がらせか?
「長門さんの一つ目の推測が成り立つには、涼宮さんの初恋の相手がジョン=スミス……つまり三年前から来た貴方で有るという前提が必要になってきます」
は?
「そうですね、長門さん」
「そう。其の理解で概ね正しい」
オイオイ、変な話になってきたぞ。
「そして前提はもう一つ」
未だ有るのか?
「古泉君、其れ以上は言わない方が良いと思う」
朝倉が辛そうな顔で発言する。しかし、古泉は首を振った。
「之をキョン君に理解して貰わなければ話が進まないんです、朝倉さん。其れに彼はもう大分前から気付いています。気付いていて、気付いていない振りをしているだけなんですよ」
そう言う古泉に朝倉が食い下がる。っつーか、話が見えないんだが。
「だけど、キョン君が自覚したくないって思っている以上……」
「聞いてませんでしたか?キョン君は自覚しているんですよ。朝倉さんの気持ちは理解の範疇ですが、馬に蹴られたくなければ黙っていて下さい」
なぁ、先刻から一体何の話をしているんだよ、お前ら。
「涼宮さんが貴方に恋心を抱いているという話です」
古泉はさらっと、そう口にした。
 
「なっ……いきなりなんだよ、お前。冗談キツいぞ」
「いいえ、冗談では有りません」
古泉の眼が俺を見据える。昨日、朝倉を詰問した時の、あの眼で。
「えらく、マジです」
 
「貴方は気付いていた。涼宮さんに因る閉鎖空間から脱出したあの日、自覚されたのでしょう?にも関わらずずっと気付いていない振りをし続けてきた。一年以上もの長きに渡り、ずっとね。
尊敬しますよ、其のじれったさは。まぁ、涼宮さんもあれで勘の良い人ですから、恐らく貴方の気持ちにも、ご自分の気持ちにも気付いているのでしょう。しかし、貴方も涼宮さんも決定的な一言は言わないでいる。何故か?」
「止めろ、古泉」
「いいえ、止めません。ちょうど良い機会です。僕が日頃思っている事を言わせて頂きます。この事件とも関連性が無い訳でも有りませんし」
其の場に居る誰も、古泉に何も言わない。否、言えないのだろう。
「貴方達は幼過ぎる。今の距離が心地良いから?僕や朝比奈さん、長門さんとの関係がギクシャクするのが怖いから?そんなものは全部言い訳ですよ」
 
「貴方は只、告白して断られる事が怖いんだ」
 
気付いてなかったか、気付いていたか。そんなもんはもう瑣末な問題でしかない。皆が敢えて今まで言葉にしてこなかったものを、古泉にはっきりと言葉にされて。
もう、気付いてなかった振りなんて出来ない。
 
「この事件、発端は確かに僕です。僕ですが……
もしも僕が涼宮さんにゲームを貸した事すら彼女の手の上だったとしたら。之は全て仕組まれていた事の様な、そんな気がするんです」
 
ハルヒ<あたし全然出てこないじゃない!!……まぁ、展開は嫌いじゃないから許すけど。
古泉<涼宮さんは分かり易いツンデレですね。
ハルヒ<キョン、あたしツンデレじゃないわよね!
 
「如何いう事だよ……?」
「忘れましたか?僕は昔、貴方に言いましたね。彼女……涼宮さんには願望を実現する能力が有る、と。だから、宇宙人と未来人と超能力者が彼女の前に現れた。逆説すれば、彼女が望まない事は起こりえない、とそう考える事が出来るでしょう。
では、今回のケースも……涼宮さんが望んだからこそ起こった。そう考えるのは不自然でしょうか?」
古泉の言う事は尤もだった。不自然でも何でも無い。寧ろそう考えた方が自然に聞こえるのは、俺がハルヒに毒されちまったからか?
「無論、僕は自分の責任を涼宮さんに転嫁する気は有りません。ですから、この考えに論拠なんて求めてはいません。しかし、涼宮さんが全ての引き金だという考え方は、以降の話を理解して頂く上で非常に重要です。
では此処で一つ、質問をしましょう。キョン君は『イニシエーション』という言葉をご存知ですか?」
「……知らん。食い物か何かか?」
俺の質問に答えたのは長門だ。
「違う。イニシエーションとは日本語に直すと通過儀礼。出生、成人、結婚、死などの人間が成長していく過程で、次なる段階の期間に新しい意味を付与する儀礼。人生儀礼ともいう。……byウィキペディア。食べ物ではない」
うん、食べ物じゃないってのは俺も気付いてたよ?で、ウィキペディアってのは何だ?
「理解を促す意味で補足させて頂きます」
シカトか、古泉。
「キョン君はバンジージャンプをご存知でしょうか?」
嗚呼、あの滝やら河やらに芸人を投げ込んで笑う奴だろ?
「其の概念は如何かと思いますが……まぁ、良いでしょう。
あれは元々とある部族の成人式の様なものだったのです。高所から足に巻いた命綱だけを頼りに飛び出せる勇気を周囲に示す事で成人として扱われる、そういう意味を持った儀式だった訳です。
恐らくイニシエーションと言うと一番連想されるのが之ですね。他には真っ赤に熱した石の上を歩かせる、無理矢理歯を抜く、なんていった物も有ります。日本では元服が之に中たるでしょうか」
何と無くで良いならイニシエーションって言葉の意味は理解した。だが、其れと今の状況と何の関係が有るんだ?
「この事件のエンディングとは何を指し示すかを覚えていらっしゃいますか?」
……魔王討伐だったな。最近忘れ気味だが。
「さて、では此処までの整理をしてみましょう。
魔王討伐がこの事件のエンディング、イコール涼宮さんが望んでいる事です。
討伐される魔王の名はジョン=スミスさん。詰まりは彼女にとっての初恋の人……其の偶像です。
そして討伐するのは彼女が今現在恋焦がれる相手……キョン君、貴方です。以上からどんな想像が出来ますか?」
お前の言いたい事が段々分かって来たよ、古泉。
「其れは幸いです」
出来れば気付きたくなかったが。
「詰まり、この事件はハルヒの初恋の相手を今現在の恋の相手がぶっ飛ばす、ってこっ恥ずかしいシナリオ……そういう事なんだな?」
あー、自分で言ってて顔が赤くなるのが隠せねー。心臓も矢鱈と煩いし、なんだか室温も上がってる気がする。チクショウ、暑いなこの部屋。
「初恋は実らないもの。そう言いますね。恐らく、涼宮さんは望んだのですよ」
 
「初恋には失恋を。失恋の甘い痛みには新しい恋を」
俺と古泉の声が見事に重なり、小さな部屋に反響した。
 
「其れがこの事件の真相です」
そう……か。コイツは一人の少女が自分に設けた通過儀礼だったのか。
嗚呼、この世界の創造に俺の妄想が一役買った事に漸く合点がいったよ。
ハルヒは俺に、過去の恋を吹き飛ばして貰いたいんだな?
初恋の処理ぐらい自分一人でやってくれよ。全く、我が侭なお姫様だよ、チクショウ。
今好きな人に過去の初恋を忘れさせて欲しいって……ハルヒらしくないじゃないか。なんて恥ずかしくて、なんて切ない感情だよ、チクショウ。
……クソッ、なんで俺の頭は其の感情を理解出来ちまうんだよ!
「長門さん、訂正箇所が有りましたら、お願いします」
「恐らく涼宮ハルヒはこの事件の事を覚えていない。一年前の世界改変と同じ。しかし、彼女の深層記憶には残る。其れが彼女を過去から解き放つものと推測される」
成る程、ハルヒ的にはこの事件は全部「夢」な訳だ。そっか。なら、良かった。
……「なら、良かった」って何だろうな。
心の何処かで安堵を覚えている自分を、醜く感じた。理由は分からないけど、酷く卑しい生き物の様に思った。
「話は未だ終わっていない」
溜息を吐く俺の前で、長門はそう、口にした。
 
「私は推測され得る事態は三つ有ると言った。此処までが一つ目」
 
キョン<公開羞恥プレイだな。
長門<未だ未だ続く……。
キョン<勘弁してくれ……orz
 
おいおい、長門よ。もう之で一通り話は済んだんじゃないのか?
「基本的な考え方は全て相似。しかし、ジョン=スミスの正体に関してのみ違う」
うーん、今更ながら魔王ジョン=スミスって冴えない名前だなとか思ってしまうのは現実逃避か。
「一つ目は単なる偶像の可能性。この場合は若干の問題が残るものの、現実に帰ってから貴方を涼宮ハルヒの魔の手から取り戻せば良いだけの話……」
ん、後半よく聞こえなかったんだが、もう一度言ってくれるか?
「問題は無い。しかし」
やっぱりシカトかよ。
「二つ目の可能性。ジョン=スミスが貴方の異時間同位体であった場合」
部屋に居た全員(長門除く)の頭の上に「!?」が浮かんだ。あ、カットインでも良いぞって違ぇ!
何だ、今長門は何て言った?異時間同位体?聞いた事の有る単語だな、如何いう意味だったか……ん、何故俺の頭は理解を拒絶しているんだ?
「貴方にこの事件の記憶が無い以上、過去の貴方ではなく、未来の貴方が召喚されたとこの推測では考えるべき。過去の例(エンドレスエイト)から涼宮ハルヒの能力が時間を越える事は立証済み。可能性は有る」
長門の言葉に古泉が立ち上がる。
「其れは……マズくは無いですか!?」
「かなりマズい」
古泉が明らかに狼狽している。何だ、長門、如何いう事だ?
「古泉一樹が涼宮ハルヒに貸した時点でこのゲームについては一通り情報を収集した。其れによるとこのゲームでは魔王の死亡が明言されている」
「詰まり、ジョン=スミスが未来のキョン君であったと仮定した場合、未来のキョン君を殺す事がこの事態を収束する唯一の手段となってくる訳です」
ちょ、其れって!
「……大ピンチ」
「勿論、現在考えられる唯一の、では有りますが。どちらにしろ、この可能性は非常にマズいと言えるでしょう。そうでない事を祈るばかりです」
之はもしかしなくても生命の危機に初直面って奴なのか?こんな下らないSSで俺って死んじまうのかよ?
無い無い。流石に其れは無いって。作者的に。
「キョン君、残念だけど今回はシリアスな回らしいの……気が動転してるのは分かるけど、落ち着いて?」
朝倉が俺の膝の上にそっと手を添える。気付かなかったが俺の膝は小刻みに震えていた。
「懲らしめて終了の可能性は無いのか?」
「そう考えたい所なのですが……」
古泉が顔を背ける。代わりに長門が言葉を継いだ。
「魔王の死がエンディングに深く関わってくる以上、死は避けられない可能性が極めて高い」
こいつは何の罰ゲームだ。
「あくまでも二つ目の推測。未だ決まった訳ではない。そう気を落とさないで欲しい」
「そうですよっ、涼宮さんがキョン君の死を望む訳無いじゃないですか!信じましょう、キョン君」
 
「あ、朝比奈さん居たんですね」
「この扱いには慣れました」
 
「そうだ、空気さん?」
朝比奈さんが此方を向く。
「空気?」
「間違えました、朝比奈さん」
「私、空気?」
いや、反応したって事は自覚有りって事ですよね?まぁ、いい。
「朝比奈さんはこの事件に関して何か知らないんですか?貴女ならこの事件に関しても知っていたり、未来から何か指令を受けていたりとか有りそうですけど」
「キョン君も私の事を空気だと思っているんですか?」
質問に質問を返さないで頂きたい。
「出し難いかな……とは思っていますが」
「キョン君!?」
「いえいえ、冗談ですよ……一割程」
「一割!?粗全部本音ですかぁっ!?」
まぁ、そうなりますね。そんなに気を落とさないで下さい。ほら、折角来た「俺のターン!」です。頑張って存在感をアピールして下さい。
「が……頑張りますっ!」
嗚呼、朝比奈さんのガッツポーズは愛らしい。作者にみくる属性が無いのが本当に勿体無い。出来れば詳細に決意に萌える……失礼。燃える朝比奈さんの姿を皆様にお伝えしたいのだが、作者的に無理なものは仕方が無い。
諦めて他のみくるSSで大いに萌えて頂きたい。あ、其の際のお相手は俺で頼む。
 
脱線事故修復。
兎に角、朝比奈さんは話し始めた。我ながら何て強引な修復作業であろう!
「えっと……禁則事項です」
はい、空気出番終了。
「じょ……冗談ですぅっ!!」
あれ、未だ出番有るんですかベアーの朝比奈さん?
「やったぁ、初台詞☆って違います、キョン君!!」
「未来でも聖闘士○矢って生き残ってるんですね……」
「古典文学の最高峰ですよ☆」
うーん……古典文学ですか……。って又脱線始めてるじゃねぇか!修正!
「ごめんなさい。私もこんな事が有ったなんて知らなくて……上司からも何の連絡も有りませんでした……」
空気出番終了。
「はうぅぅぅぅっ」
いえ、之は貴女風に言うと規定事項です。諦めて下さい。
 
今更だがこの2レス必要有ったのだろうか?
「無い。蛇足。無駄。無意味。主にあの胸。脂肪の塊。空気。風船。上げ底」
長門ははっきり言い切るなぁ。いっそ清々しい。
 
何か2レス程空気的な事が有った様な気がするが、空気なだけに気にしないで話を進める事にする。
「キョン君酷いです。お嫁に行けなくなったら貰ってくれるって……言ってくれたじゃないですか?」
返答は俺の記憶が確かならば、していなかった筈なんだが……。
 
「三つ目の可能性について話す」
長門はホントに空気を断ち切るのが巧いなぁ。
「ジョン=スミスを名乗る存在が貴方の異世界同位体である場合」
「其の可能性が有りましたか!」
イセカイドウイタイ?
「異世界……つまりは平行世界から呼ばれた可能性。之に関しては過去に例が無いので何とも言えないが、しかし十二月に私が行った世界改変の延長と考えた場合、有り得ない話ではない」
「パラレルワールドですね。成る程、僕には考え付かなかった。流石は長門さんです」
「しかし、可能性は極めて低い。之は涼宮ハルヒが其の存在を求める理由が限りなく低い為」
ふむ。で、この場合の問題は?
「特に無い」
「そうですね……問題らしい問題といえば平行世界のキョン君をこの手に掛けなければいけないという位のものでしょうか。まぁ、後味は悪いでしょうが、其の程度です」
俺が俺を殺す、か。よくよく考えてみれば、考えてみても訳分からんな。
「もしかしたら平行世界の私達が彼を守っているかも知れない。でも、障害は其れくらい。異時間同位体の可能性に比べたら問題は瑣末」
 
俺が俺を殺す事を誰が望むのか?
ハルヒが望む訳は無くて、この世界は俺とハルヒの合作なのだから、
必然望んだ奴は一人しか居ないなんて簡単な事に、この時の俺は気付いていなかったんだ。
そして俺は後悔する。どれだけ後悔してもし足りない程に。
 
自分は、とてもとても幸せだったと、そう気付いた時には全てが手遅れ。
 
古泉<途中のアレは何ですか?
キョン<作者がシリアス書くのに疲れたらしい。
古泉<慣れない事をするとダメですね。いっそ死んでしまえば良い。
キョン<全く同感だ。


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