ハルヒSSの部屋
涼宮ハルヒの戦友 3
落ち込んだ古泉を立て直すのに何で俺が太鼓持ちやらなきゃいけないんだろうな。

しかし、其の甲斐有って古泉復活、である。
「この世界はハルヒが作ったモンなんだな。オーケー、分かった」
「恐らくは。推測ですので、何とも言えませんけど」

「だが、それでも他にこんな真似をしそうなヤツに俺は心当たりが無いぜ」

俺だって伊達に何度も宇宙的未来的超能力的ハルヒ的事件に何度も巻き込まれている訳ではない。
「ええ。世界改変に似ていますが、非なるものです。僕の感覚を信用して頂けるのならば、此処は基本的には閉鎖空間とほぼ同じだと思って頂いていいでしょう。ただし」

古泉が空を見上げた。

「規模が、段違いですが」
「規模が違っても、閉鎖空間なんだろ? って事はだ」
「僕達のやる事は何時も通りとなります」
「つまり、此処で『規定事項』を満たせば」
「元の世界が戻ってくる、とそういう訳です」
古泉と俺はニヤリと笑い合う。

ふむ。ハルヒにしては分かり易くて助かるね。しかし、展開が何時も同じなのはアイツの頭が入学当初から進歩してないって事だろうか?
「ところで、ふと思ったんだが」
「何でしょう?」
古泉が小首を傾げる。お前がそんな仕草しても気色悪いだけだから、止めとけ。
「コレが閉鎖空間の延長だとして、何でお前や他の人たちが此処に居る? 其れともう一つ。何でお前は『あちら側』の事を覚えている?」
家族や岡部には「あちら側」の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。にも関わらず。喜緑さんやコイツは覚えている。この差は、なんだ?

超能力少年は額に人差し指を当てて少し考えた後に口を開いた。
「前者は簡単です。単に涼宮さんが望んだからでしょう」
ああ、五月の時は俺とハルヒの二人だけになりたい、とハルヒが思ったから、なんだよな。全く、なんてこっ恥ずかしい奴だ。
「後者は……推測でしかありませんが、恐らく長門さんですね」
「長門が?」
「この世界が生まれるに際して僕達の記憶にシールドを施した。貴方のご家族が記憶を改ざんされているのに僕と貴方だけが記憶を残している以上、そう考えるのが自然な流れかと」
成る程。ならば喜緑さんが「向こう側」の記憶を持っていたのも頷ける話だ。あの人も一応長門と同じなんたらフェイスだからな。
「この推論が正しければ長門さんは無論の事、朝比奈さんも記憶を保っているでしょうね」
確認はしていないが会長も多分、「あちら側の会長」なのだろう。でなければあの服装を恥ずかしがってはいない筈だ。
寧ろ「何か有ったかね?」とか言って見ている此方がはずかしーい状況になっていただろう。
と、いう事は喜緑さんが会長にシールドとやらを施したのか? 真逆、長門がする……訳は無いな。
そう言えば会長と喜緑さんって如何いう関係なんだろうか。……色んなSSでカップリングされているが、実際の所……?
いやいや、邪推は止めておこう。こういう事は当人間の問題であって、そっとしておくのが一番だ。
噂大好き奥様方やハルヒの様な「秘すれば華」って美しい日本語を知らない人間は粋じゃないと書いて「無粋」だしな。
大体、彼らの出番はコレ以降無いだろうし←結論
「やれやれだ」
「何やら考え事をしていたようですが……説明を再開させて貰っても宜しいですか?」
ぬっ、とステータスウィンドウを擦り抜けるように顔を出す古泉。おお、そうしていると首から上だけが浮いているように見えるな。一寸今のお前オイしいぞ?
「……話が長引いているのは作者の性ですが……貴方自身の性も有るようですね」
深い溜息を吐く古泉。分かった分かった。お前から説明を取ったら何にも残らんからな。再開してもいいぞ。
「やれ、と言われると中々タイミングが計り難いものなのですが……良いでしょう。で、何処までお話しましたでしょうか?」

わ す れ る な 。

「冗談です」
蹴るぞ。
「蹴ってから言わないで欲しいですね。……さて、此処はゲームの世界。其れも所謂RPG……ロールプレイングゲームの世界です」
ロープレな。俺も男だ。ゲーム大好きだ。そんな事は分かってるよ。
「結論から言いましょう。僕達がやるべき事はこの世界に害を為す魔王を討伐する事です」
「やっぱりそう来るか」
だよなぁ。薄々、いや、凄え気付いてはいたんだが、よりによって今回は魔王退治か。ハードル高いぞ、ハルヒ。
「ええ。コレがRPGである以上、涼宮さんが望んでいるのはエンディングであると容易に推察出来ます。ですので脱出にはコレを迎える必要が有るでしょう。この世界でエンディングを向かえるとは、イコール魔王を倒すとなる訳です」

ラスボスの居ないRPGは未だかつて見た事が無いしな。

「全く、何時もながら涼宮さんは簡潔で良い命令を御出しになる」
おい、キャラ違ってんぞ。
「これは僕とした事が」
今の誰だよ。
「置いておきましょう。作者の悪戯心です」
ハルヒの我侭にも、作者の悪趣味にも、困ったもんだ。
……やれやれ。

「では、次にゲームの内容についてご説明します」
「なるべく短く要点だけを纏めろ」
「無理です。僕のアイデンティティクライシスに繋がり、延いてはキャラが暴走しかねません」
そういうメタ発言止めろよな、お前……。
「先ず始めに……貴方は自分の職業が勇者ではない事に気付きましたか?」
そう言えば俺の職業は魔法使いだったな。ん? 魔術師だっけか?
「ええ。こういった世界で主役である筈の貴方が勇者ではないのは何故か……簡単です。勇者は別に居るからです」
「なるほどな。其れってのはやっぱハルヒか?」
「其の可能性は低いと考えます」
ええい、回りくどい。其の喋り方は何とかならんのか?
「この国はかつて魔王討伐に勇者を送り出しました。しかし、人の良い勇者は他人の不幸を見捨てる事が出来ない性分だったのです。メインシナリオそっちのけで、日々襲い来るサブクエストを今、この瞬間でさえ律儀に消化しています」
「良い奴だな、そいつ」
在り来たりの感想。ほっとけ。
「ですが、其れではいけなかったんですよ」
何故だ? 勇者らしい、まともな人格がこうやって聞いただけでも分かるじゃないか。確かにソイツはハルヒじゃないな。
「先程も言った通り、メインシナリオが放置状態なんです。現在、魔王率いる魔軍と人類が5つの大陸で熾烈な勢力争いを繰り広げています。そんな状態ですからサブクエストは泉の様に湧いて出る。誰かがメインシナリオをクリア……即ち魔王を討伐しないことには」
俺の頭を八月の悪夢の二週間が掠めて過ぎる。オイオイ、あんな事は二度とゴメンだぜ。
「もうお分かりでしょう。勇者は現在エンドレスサブクエストループに嵌っています」
傍迷惑な勇者だな、オイ。勇者なら勇者らしく自分の仕事やってろ。いや、話を聞く限り良い奴なんだろうが、其れで俺が割り食ってちゃ本末転倒だろ。
「其処で王は一計を案じました。『そうだ、京都行こう』と」
……。

……古泉? お前、何言っちゃってんの?
「三泊四日の京都観光で心身をリフレッシュした王は閃きました。勇者が役に立たないなら勇者っぽいので我慢しよう、と」
……いや、京都はスルーか?
「名付けて『下手な鉄砲も数打ちゃ当たる作戦in京都』。という訳で全国の名うての冒険者が魔王討伐に召集されました。キョン君も其の一人です」
名うてって……俺、LV1なんだが。真実、数打ちゃ当たるって奴か。
……京都はもう……好きにしてくれ。
「以上が、主人公、詰まりは貴方が冒険に出るに至った経緯です」
……あーっと。急速にやる気無くなってきましたよ?
「ちなみに僕は貴方の幼馴染兼親友でして。一緒に狩りに行ったりする仲です。今回、僕は貴方の事が心配で着いて行く事にしました」
狩りね。アーチャーらしいな。
「? ガールハント。俗に言うナンパの何処が弓と関係有るんですか?」
……。

……死にてえ。


まぁ、何だ。こうして「いつき」が仲間に加わった。
長門、其のファンファーレ思いっきり要らんぞっ!


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