ハルヒSSの部屋
涼宮ハルヒの戦友 2
「お待ちしていました」
城門の外で目を瞑って待っていた自称少年エスパーに声を掛けられる。
「驚かないんですね」
そう言って古泉は凭れていた外壁から背を離す。くそう、何をやらせても絵になるな、コイツ。

羨ましくは、無いけどさ。
「そろそろ、お前か長門が出てくるだろうなとは思っていた。如何やら今回は様式美って奴を重視しているみたいだからな。で、だ。古泉、説明しろ」
「おやおや、早速ですか? 其れも、まるで僕が何でも知っているような言い方だ。僕はウィキペディアではないのですよ?」
知らん。大体、ウィキペディアって何だ?
「まあ、ウィキペディアに関しては此処では置いておきましょう。興味が有ったら現実に戻ってからググって下さい」
「ググる?」
頭をクエスチョンマークでいっぱいにしていると、古泉がゆっくりと両の手の平を空に翳した。

お手上げ、ってかい。

「貴方は何処の教えてクンですか?」
どうも今日は今まで以上にコイツと話が噛み合わんな。
「ふう……今度、貴方とは某巨大掲示板についてゆっくり話をしなければいけないようですね」
要らん。其れよりもさっさと知ってる事を話せ。
「良いでしょう。ではお耳を拝借致します」
顔近いぞ。離れろ、古泉。

「……え?」
おい、何だそのあからさまにがっかりした様な顔は? お前、もしかしてこのSSでもガチホモ設定だったりするのか?

誰か、朝倉を呼んで来い。

「さて僕から見た今回の事件のあらましをお話します」
お前と言い喜緑さんと言い、ホント、自分に都合の悪い話を逸らすよな。
「……恐らく発端は涼宮さんが友人から貸し与えられたゲームソフトです。彼女はいたく其のゲームを気に入ってしまった。そして彼女は其のゲームの様な状況に出くわしてみたい、そう思った。そして……」
無意識に世界を改変した、か。毎度毎度とは言えウチの神様にも困ったもんだな。
「可愛らしいではありませんか。ファンタジーの世界に思いを馳せる。出来るなら其の中のキャラクターと替わってみたいと思う。僕達が何処かに置き忘れていた童心を彼女は持ち続けていたのです」
自分自身がどんなにファンタジーな存在か知らないってのはある種、罪だな。
「そう言わないであげて下さい。確かに結果だけ見れば余り喜ばしい事ではありませんが、しかし、僕はそんな涼宮さんの純粋さがとても羨ましい」
あー、古泉。悪いが、そんなお前のハルヒ観は実際問題如何でも良いんだ。
大体、ハルヒにゲームを貸したって言う傍迷惑なアイツの友人って誰だよ?男だったら一発殴ってやる。余計な事しやがって。
「僕です」

お ま え か よ 。



「いやぁ、本当に軽い気持ちだったんですよ? 少しでも涼宮さんの暇潰しになれば良いなと思って、幾つか僕のお勧めのゲームソフトを貸したんですが……ははは、こうなるとは些か予想外でした」
良し、分かった。笑顔は癖のような感じなんだったな。なら笑ったままで良い。

一寸歯ぁ食い縛れや。
「流石は涼宮さんと言った所でしょうか。いやぁ、予想の遥か上空を音速で通過していかれた様な感じですよ。そして衝撃波が我々を襲う……自分で言って中々巧い冗談ですね」
赤く腫れた頬を擦りながら古泉は言った。

……すげえな、コイツ。未だスマイル崩しやがらねえ。機関とやらの訓練の賜物で痛くなかったりすんのか?
「いえ、かなり痛いですよ?」
如何やら超能力者も人の子だったようだ。
「僕を何だと思っているんですか?」
「●」
●<ですよね……僕の扱いって何処のSSでもそうですよね。「古泉」とさえ表記されないって一体如何なっているんでしょうか? 「キモ格好良い」って本当に褒め言葉ですか?
偶にお前が格好良いSSも有るぞ?『少年オンザグラウンドゼロ』なんか神だぞ、アレ。

……って、俺は何フォロー入れているんだろうな。いや、これは断じてフォローじゃない。オマージュだ。
●<『少年オンザグラウンドゼロ』ですか。確かにあのSSは僕への愛に満たされている素晴らしいSSです。しかし他のSSを見てみてください。僕は基本的にオチ担当です。

あー、落ち込んでいるところ悪いがな。落ち込むなら説明終わってからにしてくれ。
●<貴方は僕に労りの気持ちとかは持って……。
無いな、そんなもん。この状況を作り出した黒幕にする同情なんざ俺の何処を探しても見当たらん。見当たってたまるか。其れと、其の表記(●)ウザったいから元のに戻せ。
「分かりました……はぁ、説明を再開します」
最初からつべこべ言わずにやれないのか、オマエは。
「涼宮さんが気に入った、この世界の基となったゲームですが『ドラゴンファイナル転生6 聖戦の銀河へ』というゲームです」
其のタイトル、色々……大丈夫なのか? 後、お前。今、意図的に「自分が貸した」って言うのを避けただろ。
「何の話ですか?」
「いや、良い。言及するのも危険な気がするしな」
やれやれ。ハルヒよ……お前は一体何を考えているんだ?



「皆で楽しく遊ぶのよ!」

頭の隅でハルヒの100Wの声が聞こえた気がした。



俺達は石壁の街を歩きながら話していた。

「つまり、此処はゲームの世界だと、そう言いたい訳だな、古泉」

確かに。行った事は無いがヨーロッパの古い街並を思わせる街路沿いは、リアルよりもゲームといった感じではある。
「そうです。貴方を待っている間色々と試してみた結果、九分九厘間違ないかと」
何を試していたのか、地味に気になるな。
「ああ、そんなに大それた事では有りません。一つ、試しに『オープン、ステータスウインドウ』と言ってみて貰えますか?」
「は?」
きっと今の俺はトコトン間抜け面をしているのだろう。鏡が無くても分かる。
「説明するよりも実際其の眼で見て貰った方が良いでしょう。百聞は一見に如かず、山本周五郎もそう言っています」
「言ってないだろ」
うーん、良く分からんがまぁいい。で、オープンステ……何て言うんだったか?
「リピートアフターミー『↑まっがーれ↓』」
「まっが……おい、古泉。テメェどさくさに紛れて何言わそうとしてやがる」
笑顔で誤魔化そうったって、そうは行かん。朝比奈さんだったら喜んで誤魔化されるつもりだが。
男女差別とか言うな、そこ。断じて俺は性別で差別している訳じゃない。言うなればコレは「古泉差別」だ。
「酷い話です」
お前の今日の言動と行動を胸に手を置いて思い出してから同じ台詞を言ってみろ。
「僕が何かしまし……すいません。調子に乗っていました」
俺の握り締めた拳を見て青い顔で頭を下げる古泉。

「で、何だって?」
「オープンステータスウィンドウ、です」
あー、流されてる気がするなぁ、俺。まぁいい。コレは不可抗力だ。
「おーぷんすてーたすうぃんどう……コレで良いのか、古泉、ってうわっ!?」
突然だった。俺の目の前に青い画像が現れて。



きょん ウィザード LV1
力 5
体力 12
素早さ 11
器用さ 14
賢さ 102
魔力 38
HP 21/21
MP 34/34



そう。これはRPGのステータス画面だ。「↓目的地」カーソルみたいに宙に浮いてやがる。俺は頭を抱えた。

「どんだけ非常識なんだよ……この世界は」

「ああ、ステータス画面は出ましたか?」
おう。ってか、古泉。お前には見えていないのか?
「プライバシー保護という奴ですね。ステータス画面には好感度なんて数字も出ていますから。ですが、我々の間にそんな数字は今更、でしょう」
そう言って古泉はオーバー気味に「やれやれ」のポーズを取った。

「マイウィンドウリンク、キョン」
古泉が呟く。と、俺の出したステータスウィンドウの隣に古泉のステータスが表示された。



いつき アーチャー LV1
力 13
体力 19
素早さ 21
器用さ 30
賢さ 114
魔力 10
HP 28/28
MP 16/16



「僕のステータスを貴方にも見えるようにしました。如何です? 見えますか?」
「ああ。何だ、こりゃ?」
「先ほど言った通り僕のステータスです」
そんなもんは見りゃ分かる。そんな事を問いたいんじゃねえよ。
「どういう冗談だ、と聞いているんだ、俺は」
「冗談、とは?」
「お前は驚かないのか?正直、まともな頭では理解を拒否する様な内容だ」
既に俺は頭が痛い。

「我々は少しばかり非常識な存在なんですよ。貴方も含めて、ね」
含めるな。俺は一般人だ。
「おやおや、未だそのような事を言っているのですか? いい加減諦めたら如何です? 貴方は神に選ばれたのですよ?」
選ばれたくないし、断固拒否させて貰う。
「おやおや」
おやおや、じゃない!
「さて、コレを見て頂いた所で僕、及び山本周五郎が百聞は一見に如かずと言った其の意味が理解出来たと思います。此処は間違い無く、ゲームの世界です」
お前、未だ山本周五郎ネタ引きずってたのか?
「ふもっふ、海老天と並ぶ僕のアイデンティティ、ですからね。仕方在りません」
ガチホモとか●とかアーッとか忘れてるぞ。
「詳しいですね……流石、貴方は口では何とでも言いながら、しっかりと僕の事を見てくれている。こんなに嬉しい事はありません」
見ているお前は主にオチ担当だがな。
「こんなに悔しい事はありません」
弄り易いんだと。諦めろ。

「諦めたら、そこで試合終了ですよ」

「俺達はまだ登り始めたばかりだぜ!」



長門「オチも無く続く……」
キョン「出番来ないからって気を落とすな」
長門「……(コクリ)」


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あきゅろす。
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