ハルヒSSの部屋
小ネタ「恋愛事情」
「残念だけど僕は君を友人として以上の目では見れそうに無い」
それが彼女の返答だった。分かり切っていた、覚悟していた、返答。彼女の心の中には、中学の頃からずっとキョンが居た。
「うん……そっか。そうだね」
空笑い。こんなにキツい作り笑顔も、久し振り。
僕は光陽園の制服に身を包んだ彼女の後ろ姿を、笑顔で見送った。その姿は凛として華。
失恋が、こんなに辛いものだとは予想してなかった。

「よぉ、振られたな」
「……谷口……ずっと見てたのかい? 酷いな」
「これでお前も振られんぼーズの一員だ。ようこそ、我らが同士よ」
「なんだい、それ」
帰り道、脇から唐突に現れた親友は、いつも以上に明るかった。人の気も知らないで、良い気なものだと思う。
「ま、良いじゃねぇか。俺としちゃ仲間が増えて嬉しいんだしよ」
「……僕は最悪の気分だけどね」
「だろうな。でも、そうじゃなかったらお前はアイツに惚れてなかった、って証明じゃねぇか。良かったな、ちゃんと恋をしていて、よ」
谷口の言葉にはっ、と顔を上げる。彼はやっぱりお気楽そうな笑顔だったけれど……少しだけその顔はぎこちない気がした。
「……谷口も、振られた時は凹むのかい?」
「おう! 凹むぜ! 滅茶苦茶凹む」
「そっか」
「そりゃそうだろ。好きだから格好悪い思いまでして『付き合ってくれ』って頼み込むんだぜ? 振られれば誰だって辛いもんだ」
「誰だって」。僕の親友は誰よりも恋の辛さを知っている、のかも知れない。
「……君は、慰めに来てくれたのか?」
「いんや、笑いに来た」
そう言ってニカっと笑う少年。だけどその笑顔は太陽じゃない。裏側を隠した月みたいな笑顔。

「一緒に、笑いに来た」

僕の親友はそう言って笑って。僕は不覚にも泣いてしまった。

「谷口」
「なんだよ」
「君が友達で良かった」
「恥ずかしい事言うなよ」
「ありがとう」
「お……おう。なぁ、腹も減ったしマックでも行かねぇか?」
「良いね。でも、その前にもう一つだけ言わせてくれない?」
「あ? ああ、良いぜ」

「谷口のくせに気を使わないでよ、ばーか」

そんな僕らの恋愛事情。

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