ハルヒSSの部屋
小ネタ「星空までは何マイル?」
「もしも、私がいなくなったら、探してくれますか?」
「迎えに行こう」

「しかし、アレだな。君の故郷はバイクで行けるのか?」
「知りません」
「まぁ、いいさ。バイクが無理なら他を使うまでだ」

「今日は空が高いな」
「煙草の煙を見て、言う台詞ではありませんよね」
「だが、知っているか? 届かない距離では決して無い」
「そうですね」
「空が高かったから、空を飛んだ。星を掴みたいと思ったから、宇宙へと出た。人類の歴史とは傲慢と好奇心が産んだと言っても過言ではない」
「些か話が飛躍しすぎだと思いますが」
「そうか? 俺はそうは思わない。もしも、遠く宇宙の彼方の想い人に会おうと目論んだ人間が居たとして、だ。ソイツの傲慢さも、傲慢であればあるほど、実現に近付くんだろうよ」

「そして、君も知っての通り、俺は傲慢な人間だ」
「……会長」
「首を洗って待っていろ、喜緑江美里。俺は必ず、そこに手を伸ばすだろう」
「はい……はい! 遠く、彼方で、お待ちしています」

「だが、出来れば面倒事は起こさないに限る」 
「はぁ」
「俺の傍を離れるな。連れ戻される前に、その腕を引っ張って引き戻してやる。何、大事に至らせない為の些事だ。他意は無い」
「お傍に……居ても良いんですか? 私は……私は、そのっ、うちゅ」
「その先は言うなよ。お前はただの一学生だ。それが俺の認識だ。そして、それで十分……違うか?」

「貴方は……優しいんですね」
「言っただろう。俺は傲慢なだけだ。三度は言わんぞ。俺の傍に居ろ。お前の意思で、そうしろ」
「でも、命令形なんですね」

「分かりました」
「そうか」
「でも、もしも連れて行かれてしまった時は、お願いしますね」
「そうならないようにしておけ。俺も好き好んで宇宙にまで足を運ぶほど暇人ではないのでな」
「はい。面倒臭がりやさん」
「まったく、俺の周りにはどうしてこうも厄介な奴が多いのか。一度古泉に問い質す必要が有るな」
「でも、そのお陰で出会えました」
「そうだな」
「出会えなければ、私はずっとあの頃のままでした」
「そうだな」
「貴方に会えて、良かった」
「……そうだな」
「もしかして、照れてらっしゃいます?」
「……ッ!?」

「……腹が減ったな」
「ご飯、作りましょうか?」
「食材は無いぞ」
「あら、貴方のお部屋に行くことが当然のようにおっしゃるんですね」
「……そんなに言葉尻を取るのが上手かったか?」
「会長の傍に居たら、嫌でもそうなりますよ」

「嫌か?」
「どうでしょう?」
「そこははっきりさせておけ」
「強引ですね」
「傲慢、の間違いだ」
「それでは、スーパーに行きましょう。あ、何が食べたいですか?」
「鍋しか無いぞ。包丁なども無い」
「工夫のしがいが有るというものですよ♪」

夕焼けを背景に教室を並んで出て行く二人。
誰も居ない部屋。
二人分のマグカップに向かって画面が閉じていく。


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あきゅろす。
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