ハルヒSSの部屋
朝倉デート倶楽部
なぁ、朝倉?
「なに?」
なんで俺がお前の買い物に付き合わなきゃならんのか、ちょいと納得のいく説明を頼む。
「久しぶりに帰ってきたクラスメイトなんだから、少しくらい優しくしてくれてもバチは当たらないと思うんだけど?」
確かにバチは当たらんだろうが、しかし同行する理由が無いぞ。
「可愛い女の子が付き合って、って言ってるんだから……そこは素直に感謝してくれても良いんじゃないの? って、そんなのじゃ、ダメ?」
……何度も言っているが上目使いは反則だと言っておく。
「えっと……それってOKって事かな? 照れ隠しなのか知らないけれど、キョン君ってば回りくどくて分かりにくいんだもの」
そんなんじゃねーよ。お前だってこっちに帰って来たばっかで生活必需品とか色々必要なんだろ? ほら、さっさと終わらせちまおうぜ?
「……早く終わらせちゃうのは、ちょっと勿体無い、かな」
ん? 何か言ったか?
「ううん、何でも無い!」

……荷物持ちが居て良かったな。
「え? ああ、ちょっと買い過ぎちゃったかしら?」
ちょっとどころじゃ無いぞ。お前の目は節穴か。
「でも、この量には貴方にも多少は責任が有ると思うんだけど」
はぁ? この期に及んで責任転嫁か? お前が手品みたいに諭吉さんを財布からばかばか出してたのを俺は見過ごしてないぞ?
「楽しくって、少しだけハイになっちゃってたのよ」
宇宙人がハイになるなんて初耳なんだが?
「でもね、よく考えてみてよ。そもそも私に買い物なんて必要有ると思う?」
……オイ。
「大概の物は情報操作で何とかなっちゃうんだから」
つまり、アレか? 今日一日お前に付き合った事には何の実益も無かった、ってそういう事か?
「言い方が酷いと思うんだけどな。デートって、そんな考え方は出来ないの?」
で、デート!?
「そ、デート。だって、帰って来たのは良いんだけど、バックアップって有事の際でもない限りとっても暇なの」
有事なんか起きても困るが。しかし、暇潰しに俺を使うな。
「だからね、ちょっとこの星の女子高生を見習って彼氏でも作ってみようかな、って」
人の話を聞け。
「……キョン君こそ私の話聞いてくれてる?」
聞いてやってるから一々ツッコミを返してやってるんだろうが。
「嘘、聞いてないよね」
聞ーいーてーまーしーたー。
「なら……なら、返事を……下さい」
へ? 何? 何でお前赤くなってんの?
「なんてね。冗談。期待しちゃった?」
お前、人をおちょくるにしても趣味悪いぞ。後、さっきから両腕に半端無い重さが掛かってるんで、要らない物は即刻消してくれると助かるんだが?
「そんな勿体無い事、出来る訳無いでしょ?」
お前に「モッタイナイ」なんて考え方が存在していたなんて驚きだな。
「物質に執着心を持ったりはしないわよ? でも、コレはキョン君と一緒に買い物した物だもの」
意味が分からん。もう少し分かり易く噛み砕いて地球人類にも分かるように説明してくれ。
「本当に、鈍感だよね」
溜息を吐くな。そんな真似をしたいのは俺の方だっつーの。……やれやれ。

「ねぇ……私達って貴方達を好きになったりしたらいけないと思う?」
何だ、いきなり。何の話だ? 喜緑さんでもそんな事になっちまってんのか? ……長門は……アイツに限ってそれは無いか。
「うん、そんな所。ねぇ、どう思う?」
よく分かんねーけど、当人同士が納得してるんなら周りがどうこう言う問題じゃないだろ。
「そっか。そうよね」
で、なんでお前が悩み込む質問が有るんだよ。
「じゃ、もう一つ質問」
いや、俺の話を……まぁ、良い。スルーされる事には悲しいかな慣れっこだ。
「もしもキョン君が寿命千年の女の子を好きになったとして、その子と付き合える?」
……難しいな。
「やっぱり……無理だよね」
中々想像しづらい内容だが……もしも。もしも、そうなったら俺だって悩むとは、思うぞ。
「もし、そんな事になったら……キョン君も困っちゃう、かな?」
いや、俺は別に困りはしない。
「え?」
だが、折角想いを通わせても遺して逝かなきゃいけない、ってなるとその相手が辛いだろ? ……それがな。
「優しいんだ?」
あくまで仮定の話だし、実際にどう思うかはまた別だと言っておく。後、俺は別に優しくない。いたって普通の人間で、いたって普通の感性だと思うぞ。
「そっか。じゃ、最後の質問です。これに正解したらご褒美が有るから、張り切ってね」
いつからそんなクイズ番組なノリだったか、ちょいと説明を頼む。……おい、朝倉? やっぱ無視か?
「もしも、その相手と同じ寿命の身体になれるとしたら、キョン君は……」
考えるまでも無い。ああ、だが副作用とかは勘弁な。
「……正解。問題文を最後まで言ってないのに、これ以上無いってくらい完璧な解答されちゃった」
賞品とかは特に要らんぞ。
「えー? 折角考えてたんだから、受け取ってよ」
あ、マジで有るのか。そうか。ま、何でも良いが、くれるんならありがたく貰っておくよ。
「うん。なら、賞品贈呈ね」

……握手?
「一年分です」
あーっと……悪いが日本語で頼む。生憎、宇宙規格の言語を習得した覚えは俺には無いんだ。
「キョン君って絶望的に鈍いよね」
そして、憐れみの目で見られるような事をした覚えも無い訳だが?
「一応キャッチセールスみたいなものだから、クーリングオフは認めるけど……一週間以内しか受け付けてないわよ?」
だから、俺は何を受け取ったって言うんだよ。

「私の、心です」
……謹んで返却させて頂きます。
「うん、それ無理。未だお試し期間だし……それに」
それに? なんだ、嫌な予感がするぞ、なぁ?
「私は本当に貴方に貰って欲しいんだもの」

……何度も言っているが上目使いは反則だと強く言い含めておく。


「三ヶ月です」
……ナニガデゴザイマスデショウカ。
「貴方の唾液に含まれていた表皮細胞から染色体を検出してみたの」
処女受胎!?
「ちなみにXとYのどちらが好みか分からなかったから、どっちも創ってみたよ?」
俺の意見は?
「責任、取ってくれるよね?」
母は強し、か……。

せめて……せめて好みに覚えが有れば諦めも付くんだが。
「なら、前後逆になっちゃったけど……その……『シ』とく?」
やらないで後悔するよりはマシだろうかも知れん。
「えっと……それって?」
俺なんかで迷惑かも知れんが、身に覚えも無いが……だけど俺の子供なんだろ? 責任は取らせてくれ。
「はぃ……初めてだから優しく……してね」

「ねぇ、キョン君」
なんだ?
「後ろからが多いのは趣味? それとも有機生命体のデフォルトがこうなの?」
最中だってのに……余裕有るな。俺が下手なのか? スマン。
「うーん……なんて言えば良いのかな。気持ち良い、って信号は受け取っているんだけど、信号でしかない、みたいな」
そう言えばお前達は俺たちと根本的に構造が違うんだったか。
「だから乱れたりとかを期待されたりしてたら……ごめんね」
気にすんなよ。ちょいと他人とは違うだけで、それもの個性だろ?
「キョン君……」
それにお前も言ってただろ? 気持ち良いって信号は受け取ってる、って。今はただちっとそれに慣れてないだけかも知んないしな。
「えっと……ありがと」
礼を言われるような事じゃねぇよ。……俺は気持ち良いしな。一人だけ気持ち良くて、罪悪感を感じちまうくらいだ。
「私も……気持ち良いよ」
あ? だって、お前さっき……。
「性的快楽とは違うけど、貴方と肌を重ねるのは大好きって言うか……」
……辛抱堪りません!
「あっ! キョン君がおっきく……」
……可愛い。
「ひぅっ」
宇宙人でも耳は弱いんだな。
「キョン君の意地悪……」

「お願いが有るんだけど」
なんだ? また最後まで抜くな、か?
「それはデフォルト」
そうですか。そうですよね。
「二人きりの時は……名前で呼んで欲しいな。ダメ?」
……涼子。
「ひぁぁぅっ」
やっぱ耳が弱いんだな。すっげぇ反応が有る。
「そういう事……言わないでよぉ……」

「と言う訳で三ヶ月なんだけど」
ちょっと待て。六ヶ月の間違いだろ。
「ああ。あれ、嘘」
嘘か。そうか。なら計算は合うな。って、ナニィィィィィッ!?
「責任、取ってくれるよね?」
認めたくないものだな、若さ故の過ちとは。
「お嫁さんに、して下さい」
お前、少し性格悪いぞ。直せとは言わんが自覚しろ。あと……愛してる。

「恋のカタチ 君のカタチ」is closed.


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あきゅろす。
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