ハルヒSSの部屋
古泉一樹の情操教育 5
『はだかの王様/Sexual Soul Strip』

古泉「……ただいま」
長門「おかえりなさい」
古泉「……合鍵は使用してはいけないと釘を刺した筈ですが」
長門「鍵は使用していない。鍵が無ければ開錠が出来ないと思い込んでいたのが貴方の敗因」
古泉「……もう、どうでもいいので取り敢えず服を着てくれませんか?」
長門「なぜ?」
古泉「そこに疑問を抱きますか……」

長門「ご飯? お風呂?」
古泉「前回に引き続き、そのネタを引っ張るんですね」
長門「オカしい。裸エプロンは地球人男性の永遠のロマンだと聞いた」
古泉「誰にですか?」
長門「涼宮ハルヒ」
古泉「ですよね……涼宮さん、もう少しマシな事を教えてあげましょうよ」
長門「新妻使用ピンクベース、レース付エプロンがガチとも聞いた」
古泉「……外に出ていますので服を着たら呼んで下さい」
長門「欲情しない?」
古泉「黙秘です」
長門「くるり」
古泉「その格好でターンしないで下さいっ!」

長門「着替えた」
古泉「では改めまして。ただい……なんで更に脱いでるんですかorz」
長門「その認識は間違っている。わたしは言われた通りに制服を着用した」
古泉「では、なぜ布面積が減っているんです!?」
長門「可視光の外装における反射をキャンセルした。分かり易く言えば透明化」
古泉「……そんな事をする理由が分かりかねます」
長門「貴方は鈍い。私という個体が行使出来る力を知り、私の『着替えた』と言う言葉が虚偽ではないならば、少し考えれば服を着ている事も嘘ではないと見抜けた筈」
古泉「……恐らく気付くのは無理だと思いますが」
長門「つまり、短絡的思考の持ち主には気付けない服」
古泉「僕の年頃の男性に、この状況でそこまで頭を働かせろと、強要する方がどうかしています」
長門「そういうもの?」
古泉「そういうものです」
長門「勝った」
古泉「何にですか。今回の童話が何なのかはおおよそ検討が付きましたので、速やかに服を可視にして下さい。いつまで僕に後ろを向かせておく気です?」

古泉「大体にしてですね。服を着ている事に気付けても、見えないのですから同じでしょう」
長門「衣服は衆目から身体を隠蔽する事だけが着用の目的ではない」
古泉「仰っている事は分かりますが、しかしそれも大切な理由の一つである事を理解して頂ければ幸いです」
長門「服は環境から身体を防護する事がその一番の目的だと聞いた」
古泉「いつの話ですか。現代社会ではそれは二番目です。……後で幾らでもその辺りは論じますので、今は一刻も早く身体を僕の眼から隠して下さい」
長門「……欲情した?」
古泉「ですから、黙秘権を行使させて頂きます、と」
長門「動悸が通常よりも1.83倍早い」
古泉「身体をスキャンするのはこういった場合、卑怯ではありませんか?」

古泉「で、いつも通りに制服ですか」
長門「問題無い」
古泉「さて。今回は『はだかの王さま』の話という事で良いんでしょうか?」
長門「良い」
古泉「ええ、モチーフに絡んだ登場をしようとした努力は認めますが、それにしたってアレは無しかと」
長門「大丈夫。此処は全年齢サイト。視認すると危険と思われる場所にはモザイクをかけておいた」
古泉「……芸が細かいですね」
長門「しかし、このお話は会話のみで進行し、いわゆる描写と呼ばれるものが一切無いので無駄だったかも知れない。うかつ」
古泉「いえ、私的には素晴らしい判断だったかと」
長門「見たくなかった?」
古泉「二度有る事は何とやら。黙秘です」
長門「三パス。次は無い」
古泉「いつから七並べの話になっていたのか気になります」
長門「さっき」

古泉「何が聞きたいのでしょうか?」
長門「貴方の女性の好み」
古泉「……『はだかの王さま』の話ですよね?」
長門「忘れていた」
古泉「長門さんはこのお話のコンセプトすら忘却するおつもりですか?」
長門「童話とか割と最近どうでもいい」
古泉「……えーと」
長門「貴方と話がしたい」
古泉「……話し手冥利に尽きる、とでも言えば良いんですかね」

長門「なぜ、あの様な愚行をする人間を王としたのかが分からない」
古泉「先ほどまで同じ悪行をしていた方の口から出たとは思えないお言葉をありがとうございます」
長門「照れる」
古泉「褒めてません。そして羞恥を覚えるのならばもう少し根本的な所を恥ずかしがって下さい」
長門「そんなに煽てても何も出ない」
古泉「……最近、人らしくなられてきたと思ったのは、どうやら僕の気のせいだったようです」
長門「……恥ずかしがった方が萌える?」
古泉「そんな所ばかり人間味に溢れられても困ります」

長門「そんな事より」
古泉「たった六文字で話を軌道修正しようとする、その豪腕振りには敬意を評さざるを得ません」
長門「王さまの話。彼は本当に愚かだったのか?」
古泉「ええ。その話が本筋だとさしもの僕でも分かっています。少し先ほどまでの展開に釈然としていないだけで」
長門「……もっと続けたかった?」
古泉「そういう意味ではありません」
長門「もしかしてエプロンではなく裸ワイシャツ萌え?」
古泉「……そう来ますか」

古泉「愚かでは王は務まらない、ですか」
長門「無視された」
古泉「古今問わず、世襲制から無知蒙昧な王が出る事はそう珍しい事でもないのですが……まぁ、良いでしょう」
長門「話せそう?」
古泉「僕を誰だと思っているんですか?」
長門「古泉一樹」
古泉「その名で呼ばれている男は、神さえも欺く大嘘吐きなんです。これくらい、造作もありませんと言っておきましょう」
長門「……さっきは欲情した?」
古泉「黙秘です」
長門「嘘を吐けば良い」
古泉「……最先端の嘘発見器を十世代以上進化させても適わないであろう方を相手にするのは……それこそ愚行ですよね」

古泉「さて、長門さんのお考え通りに主人公たる王が賢王であったと仮定してみましょう」
長門「左手からメラゾー○。右手からバギク○ス。合体魔法メ○クロス?」
古泉「○ト紋は名作ですね……ではありません」
長門「話の腰を折った。深く自重する」
古泉「き、気を取り直して話を続けますね」
長門「……どうぞ」
古泉「彼は賢い王でした。ので、臣下は皆、王に任せておけば国政に間違いは出ないだろうと頼り切りで何の具申もしません」
長門「そんなに賢い王様だった?」
古泉「それはもう。ですが、賢いが故に彼はこのままではダメだという事に気付いていたんです」
長門「具体的に」
古泉「どれだけ賢いとは言え、彼は一人でした。一人の眼で、耳で。捕らえられる世界の狭さを彼は知っていたんです。そして、彼は優しい王様でした」
長門「臣下に眼と耳の代わりをさせれば良い」
古泉「その、王が本来頼るべき臣下が逆に王に頼り切っていたんです。それに王が一番聞きたいのは、彼の統治する国で生きる民、一人一人の声でした」
長門「これは由々しき問題」
古泉「そうですね。何より彼には肩を並べて国政の相談を出来る相手が居ませんでした」
長門「目安箱ー(ネコ型ロボット調かつ無感情)」
古泉「目安箱では地方の声は聞けません」
長門「困った」
古泉「ええ。王は悩んでいました。そこに通り掛ったのが」
長門「二人組の詐欺師?」
古泉「そういう事です」

古泉「さて、詐欺師と言うと聞こえが悪い。『はだかの王様』は子供向けの絵本ですので、そんな言葉を使う訳にはいきませんね。という事で、彼らにも少しばかり良い人になって頂きましょう」
長門「どうするの?」
古泉「おめでとうございます。この度、『二人組の詐欺師』は晴れて『二人組の義賊』にクラスチェンジです」
長門「必要性が見えない」
古泉「個人的な趣味です。僕は『すてきな三にんぐみ』に代表される憎めない悪役というのが大好きなんですよ」
長門「『すてきな三にんぐみ』って何?」
古泉「こちらも絵本です。面白いのでまた、興味がお有りでしたら読んでみて下さい。オススメします」
長門「分かった」

古泉「さて、彼らは王からお金を巻き上げて地方の貧しい人達を救おうとしていたのですが」
長門「そんな裏設定が……」
古泉「しかし、賢く、かつ、国を心から案ずる王様と会話をして、その考えを改める事となります。義賊なので、ね。彼らが相手にするのは悪人のみだった訳です」
長門「しかし、それでは王が裸となるイベント自体が発生しない。看板に偽りが有る」
古泉「いいえ。そうはなりません。二人ぽっちの義賊は言いました。三人でこの国を変えてみよう、と」
長門「国を変える? それと裸になる間の関連性が不明」
古泉「三人は一計を案じました。そして王は、まるで詐欺師に騙された様に見せかけたのです」
長門「続きを」
古泉「着替えを終えた王を見て臣下は我が眼を疑いました。それもその筈。彼らの前に姿を見せた王は」
長門「下着一枚」
古泉「ですが、彼らは何も言えません。言える訳が無いんです。『単純な人間には見えない服』と言われてしまえば。彼らにも面子が有りました」
長門「それを告げたのは子供」
古泉「そうですね。少年は王を指して笑います。『王様は裸だよ!』」
長門「そこで本来の物語は終わりの筈。続きが有る?」
古泉「無いと始まらないでしょう」
長門「話して」
古泉「かしこまりました」

古泉「王は少年を抱き上げて言いました。『どうも私の周りには君の様に素直に物を言ってくれる人が居なかったみたいだね』」
長門「素直? それは単純とは違うもの?」
古泉「似て非なるものと言えるでしょうか。王は子供を抱いたまま集まった民に向けて言いました。『ここに居るのは王ではない。服も着ないで街へ繰り出す王など誇り高い皆が戴くだろうか!』とね」
長門「……彼は王を辞めようとした?」
古泉「まさか。誰よりも国を想う彼ですよ? 続けてこう言ったんです」

さあ! ならば今、君達が常日頃溜め込んでいるこの国の不平不満を高らかに叫ぶ事に何の不都合が有るだろうか!
この愚かな中年の耳に届けて欲しい!
畏まる必要などどこに有る!?
裸の男に対して、服を着る諸君が遠慮する事など何一つとして無い!

古泉「権威は服の上から着るものだ。とある漫画の受け売りですが」
長門「一歩間違えれば危険」
古泉「ですね。エキセントリックだとは僕も思います。しかし、そういう手段ほど効き目が有るのも、また確かなんですよ」
長門「なるほど」
古泉「他に手段が無かったのか、と問われればそれまでなんですけどね。しかし、はだかの王さまとのタイトルですから、こればかりは仕方が有りません」
長門「王様がはだかとなった理由は理解出来た」
古泉「結構です。今の長門さんの様に、王の臣下も彼の真意を理解し、以降彼らは王に自分の意見をよく伝えるようになりました。と言った所で、めでたしめでたしです」

長門「待って」

古泉「おや、物言いが付きますか」
長門「一つ解決していない話が有る」
古泉「よく気付かれました」
長門「二人組の詐欺師……義賊の事」

古泉「さて、何が聞きたいのですか?」
長門「分かっている筈。王は騙された振りをした、と貴方は言った。ならば彼らは少なくない額の褒美をまんまとせしめた事になる」
古泉「そうですね」
長門「賢い王ならば、褒美を出す筈が無い」
古泉「では、彼らが年に一度、王様の前に顔を出すようになった、としたら? どんな仮定が出来るでしょうか?」
長門「……良いカモ?」
古泉「誰ですか、そんな言葉を貴女に教えたのは。……残念ですがハズレです。王は心から国を憂う、たった二人から成る義賊のスポンサーになったんですよ」
長門「Σ!?」
古泉「有用な人材ならば、どんな人間であれ召し上げる。そしてそれを有益と出来る役職に付ける。この話の前提は『王が賢かったら』でしたよね」
長門「……彼は本当に頭が回る」
古泉「ですね。表向きは褒美。しかし実際は給金と活動費です。二人組は、中央に居てはどうしても眼の届かない地方を練り歩き、王の代わりに行く先々を救ったと。そういう話で、いかがですか?」

長門「貴方は凄い。天性の嘘吐き」
古泉「ですから、それは褒めてませんよ?」
長門「貴方の話す物語が私には真実に聞こえる。これが『嘘から出た真』?」
古泉「誤用です」

長門「めでたしめでたし」
古泉「即興でしたが、矛盾は有りませんでしたか?」
長門「無かった」
古泉「それは良かった。納得は行きました?」
長門「良い話だった」
古泉「貴女が喜んでくれたのなら、こんなに嬉しい事はありません」

長門「総括」
古泉「口から出るに任せていましたが……終わってみれば『素直の美徳』と『コミュニケーションの大切さ』。この二つを伝える物語になっていましたね」
長門「音声による意思疎通は余り得意ではない」
古泉「簡単ですよ。子供の様に思った事を伝え、そして相手の伝えたい事を聞き取る努力をすれば良いんです。先ずは思考を口に出す事から始めませんか?」
長門「しかし、それだけでは語弊を生む」
古泉「そうですね。でも、相手を慮るのは追々覚えていけば良いんです。僕も手伝いますよ。ゆっくり、この星に慣れていけば良いではありませんか。焦る必要などどこにもありません」
長門「……分かった。色々、教えて欲しい」
古泉「はい。お相手が僕でよければ。お任せ下さい」

古泉「言葉は永遠のシグナルと、歌っていたのは誰だったでしょうか……」
長門「私は貴方達と違い、意思疎通を言語に頼る必要は無い」
古泉「そうかも知れません。ですが、それは過去の長門さんの話でしょう?」
長門「今の私は違う、と?」
古泉「ええ。少なくとも音声が100%不必要とは言えない。僕はそう考えます」
長門「なぜ?」
古泉「だって貴女には愛らしい耳が、素晴らしい聴覚が有るじゃないですか」
長門「(さわさわ)……有る」
古泉「では、いつかきっと分かります」
長門「なにが?」
古泉「大切な人に自分の名前を呼ばれる充足感と、『好き』というたったの二音が紡ぎ出す世界の不思議……自分でもこれはちょっと臭かったかも知れませんね」
長門「不思議……」
古泉「はい。心という名前の、曖昧模糊にして日進月歩、奇々怪々なプログラムです」
長門「……知りたい。私にも、それは、本当に、分かる?」
古泉「大丈夫です。長門さんならいつか理解出来ます」

古泉「僕の大切な貴女なら。いつか。きっと」

長門「……今の言葉をもう一度」
古泉「いつかきっと……ですか?」
長門「その前。聞き取れなかった。もう一度」
古泉「貴女に聞き取れない周波数なんて無いでしょう?」
長門「……もう一度」
古泉「こういうのは、希少だからこそ価値が有るんですよ、長門さん」

古泉「さて、では話も一区切りした所で行きましょうか?」
長門「どこに?」
古泉「また裸で玄関に立たれては、困りますから」
長門「だから、どこに?」
古泉「見た所、制服しか持っていらっしゃらない様ですしね。エプロンは借り物でしょう?」
長門「……三度目の正直。どこに?」

古泉「せっかく可愛らしいのですから、着飾らないのは損ですよ。奢ります」

長門「……今の言葉をもう一度」
古泉「奢ります」
長門「……貴方はわざとやっている。古泉一樹を敵性と判断」
古泉「(分解中)消滅エンドは初めてですねぇ」
長門「……冗談」


長門「初めて人から貰った服。貴方に選んで貰った服。私はきっと、ずっと大切にする」
古泉「身に余る光栄です」
長門「今日の買い物の記憶も、一緒に。きっと。ずっと」


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