彼氏と彼女
彼氏と彼女 (部屋再来)
彼氏「たまには家で過ごすのもいいだろ」
彼女「うん。ここ来るの久しぶり。あれ?前には本棚なんかなかったよね」
彼氏「最近本が増えてさ。本棚買ったんだよ、ホームヘルパーで」
彼女「たぶんホームセンターのことだよね。ホームヘルパーは介護する人だよ」
彼氏「関東ではそう言うのか?」
彼女「関東だけじゃないよ!日本中どこでも――あれ?これ中学生の教科書じゃない」
彼氏「久しぶりに勉強してるんだよ。けっこう忘れてるからさ」
彼女「そうなんだぁ。私はまだまだ覚えてるよ。国語とか得意だったし」
彼氏「ホントかよ?四字熟女とかも覚えてるか?」
彼女「熟女!?四字熟語ね。四文字の熟女覚えてどうすんの……漢字の問題出してあげる。『滞る』これ読める?」
彼氏「くわだてる」
彼女「『拘る』これは?」
彼氏「くわだてる」
彼女「『孕む』これは?」
彼氏「くわだてる!」
彼女「くわだてるへのこだわり捨てろ!くわだてる一生出さないよ!?三問目に関しては送り仮名見て……どの科目が得意だったの?」
彼氏「社会だな。特に経済のことなら俺にまかせろって、いつも部屋の壁にむかって呟いてたよ」
彼女「それは鬱だね。じゃあ問題ね!物価が上がって貨幣価値が下がることを?」
彼氏「インフレ!」
彼女「じゃあその逆は?」
彼氏「セフレ!」
彼女「セフレ!?」
彼氏「インフレーションとセフレーションだろ」
彼女「なんか卑猥!デフレね、デフレ。数学とかはどうなの?」
彼氏「まぁまぁかな。因数はよく分解してたな」
彼女「因数分解をそういう言い方する人いるんだね。私は理科が苦手だったな……でも落体の法則っていうのは好きだった、知ってる?簡単に言っちゃうと、重さの違う物でも落ちる速さは同じってやつ」
彼氏「知ってるよ。コップと小皿で実験したよ。同じ高さから同時に落としてみた」
彼女「どうなった?」
彼氏「同時に砕けた」
彼女「だろうね。物選ぼうよ……そうだ、社会得意なら地理とかどう?」
彼氏「どうだろ?問題出してみろよ」
彼女「東南アジアで、約一万の島――」
彼氏「インドネシア共和国」
彼女「……正解。16世紀からスペイン――」
彼氏「フィリピン共和国」
彼女「極端!!地理だけ詳しすぎるよ!問題途中だし……」
彼氏「ベトナム社会主義共和国!」
彼女「問題出してないよ!?予知!?」
彼氏「英語も得意だったかな」
彼女「じゃあ英語で自己紹介してよ。名前と出身地と年齢だけでいいから」
彼氏「いやいやいや、それはテレパシーの侵害だろ」
彼女「プライバシーね!?テレパシーは自由に送ってもらってけっこうだけど。英単語くらいは知ってたほうがいいよね。恥かくよテレパシーとか言ってると」
彼氏「問題出してみろよ」
彼女「じゃあ、蜘蛛を英語で?」
彼氏「スパイダー……マン」
彼女「なんでマンつけるの?本当、変わってる……でも一緒にいると楽しいなぁ」
彼氏「そういえばこの前の……」
彼女「わかってるよ。この前はテンション上がって指輪もらっちゃったけど……結婚はOKできないなぁ」
彼氏「俺のこと嫌いになった?」
彼女「ううん。今はまだ結婚なんて考えられないの。まだ彼氏と彼女の関係がいい。だから指輪はとりあえず返しとくよ」
彼氏「やるよ。それただのちくわだし」
彼女「ちくわなの!?ダイヤだと思ってた……」
彼氏「光の関係でそう見えるんだよ」
彼女「光の関係で?」
「そう、光の関係で。理科が苦手なんだろ?だからわからないだけだよ。そういうことだからお前が持っとけよ」
彼女「……ありがとう」
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