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ちょっといい話
シロ
小学校の時に飼ってたシロ。
ウチの親父は猟をやっていたせいか、普段は当然、親父に絶対服従の忠犬。

親父はシロを散歩に連れて行くときは よく自転車を使ってた。
数キロ離れた親父の友人宅に行った時は そのまま晩酌になって、時々泥酔して帰ってきてた。
酩酊状態で自宅への岐路も判断できない状態だったのに、無事帰宅できたのは
シロが一緒にいたからだろう。

ある日の下校途中。
自宅の近所の通りの向こう側に 酔っ払ってフラフラの親父とシロの姿。
親父は酔ってて、自転車には乗れず。その横にハンドルにつながれたシロ。
何度も親父の方を振り返りながら、危険のない様に親父を誘導している様だ。
俺は心配でハラハラしながら 信号待ちで様子を見ていた。
親父は酩酊状態でシロにぶつかったりしている。足も何度も踏まれている。
シロは鳴かなかった。
子供心に(なんて根性のある犬なんだろう・・)と思った。

やっとのことで自宅の前に着いた時、親父はバランスを崩し倒れた。
親父と自転車の二つに つぶされたシロ。 シロはそれでも鳴かなかった。


それ以降のシロは 親父が少しでも酒の匂いがする時は
鼻にシワをよせ唸る様になったが、決して噛んだりはしなかった。
反面、全くの素面の時は 忠犬そのものだった。
俺は酒乱の親父がたまらなくイヤだったので、
深酒している親父にシロを近づけると、さすがの親父も反省するのか飲のを止めたりした。
シロは俺の理解者だった。

暫くして親父が死んだ。 
その夜からシロの遠吠えが何日が続き、あくる日、首輪を外して居なくなった。
心配して捜しまわったが見つからず、落胆していると数時間後に何事も無かった様に帰って来た。
鎖と首輪を頑丈にし、注意していたが、また数日するとシロは居なくなり、
また無事に帰って来るという繰り返しが続いた。

ある日、電話がきた。
『お宅のシロちゃん、ウチに来てますよ。迎えにきてください』 ・・電話は父の飲み友達からだった。
「すぐに行きます」  急いで向うと
『玄関に入れて見てたんだけど、急に戸を開けて出て行ってしまったの、すいません』 と父友人。
「どの辺りに向った様ですか?」と聞き、その方角を探しにいってみると遠くにシロの姿を発見。
そこは また違う父の飲み友達の自宅前だった。

俺は やっと理解した。
シロは親父を探していつも徘徊していたんだ、、、と。
その晩、犬小屋に親父の服を入れてやった。
それからシロは徘徊しなくなった。

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