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* 結城side *
「ぅ…、あ…っ」
隣の部屋から、聞こえてくる声。
昨日の夜もそうだった。
まだ、叶多がこの部屋に来てから二回目の夜だ。
俺と叶多も、そこまで踏み込めるほど仲良くはない。
それでも、気づいてしまえば気になるのは当然で。
どうにかしたいと思うのもそれは当たり前で。
けれどドアノブを掴んだこの手が廻らないのは、多分叶多のあの瞳が原因なのだと思う。
冷たくて、無機質で、少しの虚ろさを滲ませた、赤い、紅い瞳。
動かない表情。
驚くほど整っている顔のせいであまり目には付かない左目の下の刺青。
そして、白い髪。
染めたのではなくあれは地毛だと、見下ろしたときの頭頂部の様子でわかった。
拒絶はしていない。
でも仲良くはしようとしていない。
『お好きにどうぞ。』
全身で、そう言っているような気がした。
「ぁあ"…っ!!」
一層高い声が響いた瞬間、先ほどの考えが嘘のように俺は扉を開けて叫んだ。
「叶多!」
「未来っ!!」
その声と叶多の声が重なる。
がばり、とベットの上で起き上がる叶多。
頭を抱えて、体操座りの格好。
黒いベットカバーにぱさりと白い髪が落ちて、なぜだかひどく背徳的な感じがした。
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