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誰かが近づいてくるのが気配でわかる。
それからしばらくして、閉じている視界に影。
その”誰か”が俺の前に立ったせいで、太陽光がさえぎられているらしい。
「寝てんのか…?」
ちっ、と近くで舌打ちするのが聞こえた。
「起きてるよ。」
多分独り言のつもりで相手が言った言葉に答えを返す。
動揺したのか、一瞬だけ気配が揺れた。
目を開くと、座って門の壁にもたれている俺を異常な近さで覗き込んでいる、えらく男前なやつが目に映った。
しかも無駄にエロい。制服なはずなのに。
「邪魔、どいて。」
そこにいられたままだと俺が立てない。邪魔だ。
心なしか驚いたような表情を浮かべた男前さんと目が合っている時間が続いて、しばらくしてからそらされた。
「んー…っ。」
立ち上がって、伸びをする。
座っていたせいで、制服に少し汚れが付いてしまったのは、まぁしょうがないか。
と、思ったのだが。
少なくとも三年間はここで過ごさなくてはいけないことを思い出して、それを手で払っておく。
「転入生の藤原叶多か?」
「そ、多分。」
「俺は生徒会長の三年城島冬麻だ。付いてこい。」
わぉ、年上だったのね。
ここは、国立彩智学園の正門前。
俺は、今日からこの彩智学園とやらに編入する。
学年は、高校一年。
いつの間にか忘れていた自分の歳は、どうやら15だということを最近知った。
まぁ、誕生日がわからないのだから歳がわからないのも当たり前か。
事前に聞いていた話だと、この学園は全寮制でしかも男子校らしい。
普通のやつらに言わせれば恋愛がどうのこうの、ということになるみたいなのだが。
正直俺には関係のないことだ。
はっきり言えば、どうでもいい。やるなら勝手にどうぞ、的な。
俺に恋愛なんてできるはずがないし、したくもない。
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