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* 叶多side *
「ニャー」
ベンチに座ってぼーっとしながら時計を眺めていると、突然猫の声が聞こえた。
真っ黒な、綺麗な毛並みの猫。
目がはちみつみたいにてかてかと光っていて、
「おいで」と小さく呼ぶと、賢いのか膝に乗っかってきた。
「お前、名前は?」
「ニャーン(ないよ)。」
「そっか、ないのか。」
猫がまばたきを一つする。
どうやら会話が成立したことに驚いているらしい。
叶多は動物と話すことができるのだ。
これも、実験の成功者だから故の能力。
だから、動物は好きだ。
「野良?」
「ニャ(そう)。」
「じゃ、俺が飼ってもいい?」
「ニャー(うんっ)!」
「名前、付けなくちゃな。」
叶多が、笑う。
それにつられてなのか、心なしか黒猫も目を細めて心地よさそうにした。
暖かい空気と微かに吹く風、周りの木々の音に加えて膝に乗っている温かな重みに、段々と眠気が襲ってくる。
(少し、寝よう。)
「おやすみ…凪。」
目を閉じている黒猫…凪の背中をゆっくりと撫でて、叶多も目を閉じた。
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