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手すりなどで勢いを殺すことはせずに、そのまま空中を降下する。

途中でスピードが落ちてしまえば、それだけ人に見られる可能性が高くなるからだ。

奇異な髪と目の色を持つ俺だから、ちらりと目撃されるだけで、個人が特定できる可能性が高い。


面倒事を避けようとヘマをしてさらに面倒になってしまうなんて、三流がやること。
それだったらやらないほうがまだいいわけで。


それでも、直接地面に足をつければそれなりに痛みがある。
他の人間よりかは治癒は早いし頑丈に出来てるけど、痛みは避けたいものであること自体に変わりは無い。


と、いうことで。

ちょっと体を空中でひねって、落ちる方向を変えると

「うい、っしょ」

寮の方向に張り出していた太目の枝の比較的平ら目なところにつかまって、ぐるりと体を一回転。

もちろん手は痛い。
だって枝ですから。ごつごつしてますから。


それでも、直接地面に着地したときに走る痛みと、残るけだるさを考えれば致し方ない。
しかもその場合、降りてすぐに動き出せないしね。リスクも高い。


木全体が振動で揺れて、葉ががさりと音を立てる。

でも今日は無風というわけではないので、他の木の音に紛れただろう。
それもしっかり計算の上だ。





唯一つ、計算外だったのは。

『始業式をおおっぴらにサボろうとするやつもいる。』ということ。


まさか隣のバルコニーに人がいただなんて。
しかもそいつもほぼ完璧に気配を消していただなんて。


叶多が犯した、一つ目の失態。

さてさて、これがどのように発展していくのかは、誰も知らない―――。




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